月影に潜みし者達
東京都内、深夜。
とある大きな屋敷の一室で、6歳程の少女が目を覚ました。
「……姉様」
金と銀の瞳に哀愁を浮かべて、ぽつりと頭を過った人物を呼ぶ。
「起きたか」
「東雲様」
部屋に入ってきたのは、着物をかなり着崩した妖艶な美女。
「輪廻が巡り、主(アルジ)はこの世に生まれた」
「ええ」
「あと五年の辛抱。その時、主は記憶を取り戻す」
コクりと頷き、東雲は緩く笑う。
「主のいない間仮死状態にあった故知らぬじゃろうが、一度この結界も揺らいだ。なかなかの強者が生まれ出ておるようじゃ。主が聞いたらさぞ面白がるじゃろうて、のう蒼華?」
くつくつと楽しそうに笑う美女。
血の臭いが煙る夜のこと。妖しき笑みは隠れて浮かぶ。
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