血に染まる夜




その日、関東にある妖怪仁侠一家奴良組は、久々の出入りから帰る途中だった。
三代目が昨年生まれて、出入りを極力避けるようにしていた彼らは、今年初の出入りで久々の解放感を味わっていた。
わいわいと騒ぎながらの帰宅に、奴良組二代目総太将奴良鯉伴は、苦笑しながら下僕との会話に花を咲かせていた。
しかし、その歩みは突然止まった。


「どうしたんです、二代目?」


それに気付いたのは、話相手の青田坊という妖怪だった。


「青……いや、ちょっとな。なぁ、何か聞こえねぇか?」
「何かって何ですか?」
「……」
「二代目?」
「、赤ん坊の泣き声だ」


首無の質問に鯉伴は目を伏せて答えた。
下僕が笑ったのが気配で分かった。


「泣き声つったって、ここいらの人間が生んでれば不思議ではありませんよ」
「そうなーーーっ!!」


次の瞬間、膨大な妖気が爆発的に現れ、辺りに漂った。


「これはっ!?」
「何が起こったんだ!?」
「どうしますか?ーーっていねぇ!!」
「おい!二代目を追いかけろっ」

ざわざわと騒ぐ下僕を後目に、鯉伴は駆け出した。
妖気を辿って行くと、次第に血の臭いが漂い濃くなる。それと共に赤子の泣き声も大きくなっていく。

そしてたどり着いた場所は、まさに惨劇の一言だった。

元は公園だったその場所は、今は見る影もなく、血の海と形容するに相応しい状況だった。
鯉伴は思わず口許を着物の袖で覆い、眉をしかめた。
跡形もなく肉塊と化したそれらは微かな妖気を放っており、元が妖怪だったとかろうじて理解った。
その中心にいたのは、莫大な妖気を発する生まれて間もない赤子と血を流して倒れている女だった。


「おいっ、大丈夫か!?」


鯉伴はすぐさま倒れている女に駆け寄ったが、既に息はなかった。
追いついた下僕たちが、その状況に息を呑み呆然としていた。そんな中雪女が一人我に返り、泣きわめく赤子を抱き上げる。あやそうとするが、一向に泣き止まない赤子に彼女は眉をハの字にさせて困り顔を浮かべた。


「…二代目、どうすれば」


赤子が発する莫大な妖気に、彼女は顔色を悪くしている。

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