噂の少女、神崎伊織なり



三年A組には休みがちな問題少女が在籍しているらしい。なんでも家の事情により一か月の長期休み、遅刻、早退は当たり前。登校してもサボって生活指導の教師と追いかけっこを繰り広げ、気に入らない教師には悪戯という名の嫌がらせ。
しかし、それも二年もたてば教師たちも慣れるといいもの。現に校長は呵呵大笑して受け入れ、教師達は職場環境が改善されていることに密かに喜んでいた。


神隠小学校の屋上はかなり見晴らしが良い。真っ青な空をボーッと眺めていた少女の頭に衝撃が加わったのは四時限目の授業が終了して数分後のことだった。


「いって………」
「さっさと起きろ、昼だ。このバカ」
「影華ちゃんらしいけどね」


衝撃に加えて暴言を吐いた少年と、クスリと微笑む少女が彼女の近くに立っていた。


「学校でその名前で呼ぶなっていってるだろ、朱音?」
「ゴメンね、伊織ちゃん」


全く悪いと思っていない様子で笑う少女に軽くため息を吐いた。次いで、少年をギッと睨む。


「つーかな、拓。人の頭蹴るなよ」
「サボるお前が悪ぃ」


睨まれた少年は平然と宣う。
曙朱音(アケボノ アカネ)、桜美拓弥(オウミ タクヤ)、この2人は彼女神崎伊織もとい黒須影華の親友であり"神崎伊織"の正体を知る数少ない人物である。


「ま、とにかくメシ食おうぜ」


そう言って拓弥が掲げたのは、3人分の弁当袋。
屋上の絶景を眺めながらのメシは結構美味い。


「あ、私近々留学してくるから」


突然言われた内容に、朱音と拓弥が目を白黒させていたのは仕方のないことである。

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