行方知れず



あの事件から約2ヶ月。鯉伴が目を覚ましてから1ヶ月と少し。
羽衣狐に影華共々刺され意識を失った鯉伴が目を覚ましたのは、奴良組本家の自室だった。
リクオに呼ばれて駆けつけた下僕達が見つけたのは、血まみれの鯉伴だけ。影華の姿は跡形もなく消えていた。


「まだ見つからねえのかい?」


口を真一文字に閉じている下僕達の表情を見れば、返答など分かりきっている。しかし、鯉伴は聞かずにはいられなかった。

妖刀に刺され、妖刀が半分まで減っている鯉伴は先日の総会で二代目をを降りた。
今でも下僕達を率いていく自信はある。だが、大将を信頼できない下僕達を率いて、大将と言えるか。答は否だ。


「まだ……」


言葉を濁す下僕達の言いたいことは分かる。
子供である影華が鯉伴以上の傷を負っているのだ。助かるはずがない。

そろそろ潮時かもしれない。

鯉伴はため息を吐いた。手で下僕達に下がるよう示し、今日も離れに向かった。






「なーにを黄昏ているんじゃ」
「親父……」


縁側で庭を眺めていた鯉伴の頭をはたいたぬらりひょん。


「そろそろ潮時かと思ってな」


肩を落とす息子に反論しようとぬらりひょんは口を開く。
リンッーーー
不意に聞こえた鈴の音に、2人は顔を上げた。
視線の先には、何時だったか紹介された娘の契約妖怪、冬槻いた。



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