革命本格始動



しばらく少女とリクオは一緒に遊んでいた。影華も誘われたが、あいにく遊びに興じられるほど精神的余裕はなかった。
ひたすら鯉伴の手を握り締め、リクオたちを見守る彼のそばにいた。


「あ、アレなんだろう」
「リクオ、あまり遠くへ行くなよ」


何かを見つけて行ってしまったリクオ。
刹那、風が強く吹き黄色の花弁が視界をかすめ、鯉伴は咲き誇る山吹の花に過去を思い出す。
少女も山吹の花に目を奪われ、手を伸ばす。


「キレイ……」


影華はただ静かに少女の行動を見ていた。少女は花輪を作り始め、鯉伴は静かに言の葉を紡ぐ。それは革命へのカウントダウン。


“七重八重 花は咲けども 山吹の
    実のひとつだに なきぞ悲しき”


少女の手が止まった。


「あの後、山吹の花言葉を何度も調べちまったっけ。気品、崇高………」


ゆらりと立ち上がった少女。鯉伴は苦笑とも後悔ともつかない表情を浮かべていた。影華はゆっくりと、つないでいた手を名残惜しそうに離した。


「そして、“待ちかねる”。まるでオレたちの娘みてぇだ」


怪しく笑った少女の手に花輪はなく、代わりに刃がボロボロな刀。


「お父さーん」
「リクオ……」


鯉伴が後ろを向いた瞬間にそれは突き出され、鮮血が舞った。
・・
子供の薄い体など何の障害にもならず、鯉伴の脇腹までもを貫いた。


「っ」


刀が引き抜かれ、鋭い痛みに息を止めた。しかし鯉伴が受けた傷は致命傷にはならない傷で。妖刀だったのか妖力も抜けるが、それも大したことではなく。
ならば―――。

トサッ

振り向いた彼の目に映ったのは、愛娘が地に倒れ伏し血を流す姿だった。


「っ、影華……!」



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