本音



じぃっと無言のまま見つめあう幼女と靄(モヤ)。

何とも奇妙な構図である。


信じがたいことではあるが、そういった妖怪がいると影華は聞いたことはある。
大抵、そういう妖怪は“主”がいなければ、持ちうる実力を十分に発揮できずに他の妖怪によって食い殺される。加えて、主になるものの力に比例して、その妖怪の力も強くなる。このことから、それに属する種類の妖怪達は大抵“主”を持ち、数は少ない。

それをこの妖怪は、主を持たずに攻撃され、怪我を負いながらも生き延びたという。彼単体だけでもかなりの実力を持っているということになる。


『………お前なら認めてもいいかもしれん』


不意に彼は言った。
しかし、影華は突然過ぎて一瞬理解できなかった。


『お前を我が主にと言っている』
「……へ、」


その言葉にさすがに本気だと気づき、目を丸くして驚きを顕にした影華。
彼はいつの間にか黒猫の姿になっていた。その瞳が思っていた以上に真剣で、二の句が継げなくたった。


「でも、主って言われても……」


言葉少なく俯いたが、空気で彼は先を促す。


「私、まだ子どもだし」
『当たり前だ』
「、力の使い方なんて分かんないし」
『教えてやる。学べばよいことだ』
「っ!!」


悉くバッサリと切り捨てられ言葉に詰まる。だが、影華には引けない理由があった。その後も押し問答が続くが、彼女が言うこと全てに返答した彼は初めて彼女に問うた。


『それほど力があって、何に怯える?自身を認められないものに守れるものはない』


その一言に影華は唇を噛む。
確かにその通りであった。いくら力が強く隔離されていようとも、使いこなせなければ“宝の持ちくされ”に違いない。


「私には守りたいものがある。………私の行動ひとつで世界が壊れるかもしれない。それは、…少し怖い」
『…』
「、私は確かにここにいて、………生きている。決して“異端”じゃない。………でも、この世界は私が知っている世界と似ている。取り返しのつかなくなるようなことはしたくない」
『それがお前の本音か』


静かに聞いていた彼のそれは、疑問ではなく確認。それに彼女は力なく是と頷いた。

真相心理で燻っていた小さな蟠(ワダカマ)り。

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