モノクロ世界
影華は気づくと“そこ”にいた。
白黒写真のような風景の中で、影華は兄・リクオとともに歩いていた。
「遊びましょう」
「うん!!」
現れたのは自分より年上であろう白黒の少女。
(これは私の記憶…?)
影華は前世の記憶があった。それも、こことは別の世界に住んでいたころの。
今、影華の周りにいる彼らが漫画としていた、そんな世界。そして、影華はその漫画を愛読書としていた。
ぼーっと前世のことを思い出していれば、いつの間にか父鯉伴がいて、、少女とともに遊んでいた。
そして――――
「“七重八重 花は咲けども 山吹の
実の一つだに なきぞ悲しき”」花を見て遊んでいた少女のてが止まる。
――――言の葉は紡がれる。
「あの後、山吹の花言葉を何度も何度も調べちまったっけ。“気品”、“崇高”…」
ゆらりと立ち上がる少女。
鯉伴は苦笑とも後悔ともつかない表情を浮かべ、少女に完全に背を向けている。
「そして、“待ちかねる”。まるで俺たちの娘みてぇだ」
「お父さーん」
「リクオ…」
少女の手にはボロボロな刃の刀。
「っ!!」
鮮やかな紅がモノクロの世界に咲く。
飛び散るアカは、
ゆっくりと世界を染め上げる。「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあっ」
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