第五章 魔法薬の先生



気まぐれな奴だと心中思いながら、地下牢へと向かう。因みに、ハッフルパフとの合同授業だ。
フリットウィックと同じく、スネイプ教授もまず出席を取った。そして、ギルバートの名前で一瞬止まった。戸惑っているようだった。しかし、それも一瞬のことで、すぐに出席を取り終わると生徒を見渡して、語り始めた。


「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」


呟くような声で、特別声を張っているわけでもないのに、自然と生徒は話に集中した。知識欲旺盛なレイブンクロー生もハッフルパフ生も一言も聞き漏らさないように耳を傾けている。彼もまた、クラスを静かにさせる能力を持っていた。
ギルバートはベルベットヴォイスに誘われるように、翡翠色の瞳を閉じた。大演説は続く。


「このクラスでは杖を振り回すようなばかげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとはとうてい期待しておらん。私が教えるのは、名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である―――ただし、私がこれまでに教えてきたウスノロ達より諸君がまだましであれば、の話だが」


教授が口を閉じれば、教室の中は耳が痛いほどに静まり返った。レイブンクローで過ごして数日ではあるが、その性質はプライドが高く、負けず嫌いであると認識し始めたギルバートは、教室に渦巻く空気が早く実践させろと言っていることが容易にうかがえた。
スネイプは突然、「ポッター」と名指しした。


「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるかわかるかね?寝ているくらいなのだ、これくらいわかるだろう?」
「ああ、すみません教授。寝ていたわけではなく、教授の演説に少々聞き惚れておりました。
質問の答えですが、眠り薬です。あまりに強力なため生ける屍の水薬と呼ばれていますが。材料としてはアスフォデルの球根の粉末、煎じたニガヨモギのほかに、刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁などが使われています」
「…では、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、どこを探すかね?」
「(スルーされた…)山羊の胃から取り出します。まあ、私は真っ先にこの教室の棚を探しますが。
効能としては大抵の解毒剤になりますが、当然副作用もあるので、取り扱いには十分に気を付ける必要があります。緊急の場合には最適な代物でしょう。
まあ、副作用云々についてはクスリには当然のつきものですが。ああ、そういえば、スネイプ教授、マグルの薬には副作用は勿論のこと、間違った分量や薬を併用することで体に害を及ぼすことがあるのですが、魔法薬にもこれは言えることなのでしょうか?」
「それは授業後にでもお答えしよう。…モンクスフードとウルフスベーンの違いは何かね?」



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