第五章 魔法薬の先生



そこにあったマッチ棒は、色とりどりな蝶へと姿を変え、教室中を飛び回る。そして、女子生徒と教授の前に来ると、今度は生花の白いバラへと変わった。


「プレゼントです」


飄々とウィンクしてギルバートがいうと、それまでの出来事に見惚れていた生徒たちははっと我に返り、歓声を上げた。
マクゴナガル教授も仕方ないといった様子で苦笑した。


「素晴らしい才能です。レイブンクローに十点を差し上げましょう」



「闇の魔術に対する防衛術」は、肩透かしを食らった上に一番最悪だったの一言に尽きた。教室がニンニク臭いのに加えて、先生のドモリで聞きづらい。レイブンクロー生は知識欲が旺盛で、クィレルがゾンビをやっつけた話をすると質問を次々としていった。

それを傍観しながらギルバートははたと気が付いた。

エクリプスはかつての闇の帝王だが、今はギルバートが魔力を封じ猫の姿に変えた。そのためクィレルの頭に寄生する必要がない。加えて、エクリプスは部屋からあまり出ない。そして、ギルバートはエクリプスにいずれ元の姿に戻すことを約束しているので、復活することは彼にとって急務ではない。というか、最近の様子を見ていると、本当に“闇の帝王”として復活したいのかわからない。

学校に置かれた賢者の石を狙ったヴォルデモートがハリーの前に姿を現す、というのが今年のあらすじである。それが根本からずれているのにも関わらず、クィレルは闇の魔術の防衛術の教師だし、どもっている。


「物語の強制力か・・・」
「何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」


低く呟かれた言葉は肩に乗っていたエクリプスにしか聞こえていなかった。



そして、今日は魔法薬学、つまりスネイプ教授の授業の日である。エクリプスは何か散策がしたいとかで、同行しないらしい。



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