第五章 魔法薬の先生



「見て、見て」
「どこ?」
「メガネをかけてる子?」
「顔見た?」
「あの傷を見た?」


翌日ミトニッタが寮を出たとたんに、ささやき声が付きまとってきた。彼女はどうやら満更でもないようだった。


「まったく、生徒の噂好きには困ったものだな」


ギルバートは朝食の席で、―――レイブンクローの席に押しかけてきたリヒトが左隣に、一緒に寮から来たジャンが正面にいた―――二人にそう言った。その口元は楽しげに吊り上っており、露ほども困っていない表情である。
2人は苦笑し噂の根源である少女を視界に入れるも、すぐにそらした。
ギルバートは言いたいことがわかったような気がした。


「彼女も満更ではないようだし、まあ、害がないといえばないが・・・」


皮肉気に言葉を紡ぐギルバートに、彼らは頷いた。



話は変わるがホグワーツには百四十二もの階段があった。壮大といえるほど広い階段、狭いガタガタの階段、金曜日にはいつもと違うところへつながる階段、真ん中あたりで毎回一段消えてしまうため忘れずにジャンプしなければならない階段・・・など。また、扉もいろいろあった。お願いしたり、くすぐったり、扉のふりをした壁など。さらには、ものというものが動き回るために、どこに何があるのか覚えるのも、新入生には大仕事だった。
そのほかにも、ゴーストや管理人のフィルチ、彼が飼っている猫のミセス・ノリス。
そして、やっと教室への道になれた彼らに待っていたのは、授業であった。魔法とは、ただ杖をふっておかしな呪いの言葉を発するだけではなかったと、彼らはすぐに思い知らされることになったのだった。

週一回の真夜中には、望遠鏡で夜空を観察し、星の名前や惑星の動きを勉強しなくてはならなかった。睡眠不足の体にはひたすらに眠い授業である。週に三回、ずんぐり小柄なスプラウト先生と城の裏にある温室に行き、「薬草学」を学ぶ。不思議な植物やキノコの育て方、用途、などの勉強である。育て方なわけだから、苗やら肥料やらいろいろ実践することが多いため、泥だらけになることもしばしばであった。



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