第二章 魔法学校と案内人 スネイプはレイチェルに手紙を差し出した。 「あの、質問しても良いですか?」 「聞こう」 「なぜ、突然手紙が送られてこなくなったのですか?」 「それは……」 遠い目をして話し難そうに目線をそらした。 ((あの狸か)) 「いろいろと事情が、な」 「お疲れ様です」 「ギルバート!!」 突然金切り声が居間に響いた。ソファから立ち上がり、居間の入り口に視線を向けると、顔面蒼白といった様子のペチュニアがいた。 「おばさん」 「ペチュニア、久しぶりだな」 二の句を継がないおばさんに代わって、スネイプが口を開いた。 ペチュニアはぶるぶると震えだし、しかし、その瞳はスネイプを睨めつけていた。 「セブルスっ。あなた…」 わなわなと唇を震わせ、ペチュニアおばさんは男の名前を呼んだ。 「妹が行方不明になっているのに、よくも私の前に姿を現せたわね」 「私は、」 「幼馴染のあなたが!!あんな世界にリリーを連れて行かなければ、こんなことにはならなかったのよ!!?」 金切り声をあげてペチュニアおばさんは叫ぶ。スネイプ教授は口を開くが、結局何も言えずに黙ってしまった。 レイチェルは一つ息を吐いてペチュニアおばさんに向き合う。 「おばさん、私、母さんたちが魔法使いだって知ってたよ」 この言葉に二人は驚愕に目を見開いた。 「おばさんたちは教えてくれなかったけど、まだ小さいとき夜におばさんたちが母さんたちの話をしていたのを聞いた。だから……全部知ってる。」 およそ十一歳とは思えない落ち着きようは、はたから見ていて気味が悪いものだ。しかし、ここにいる者たちは全員その違和感に気づいていなかった。 「おばさん、俺はホグワーツに行こうと思う。おばさんたちがこういった力を毛嫌いしているのは知ってる。でも、このまま制御の仕方を覚えなければ、今まで育ててくれたおばさんたちを傷つけてしまう。俺、それだけは嫌なんだ。だから、行かせてください」 その翡翠の瞳を細めて、ゆるく笑う。苦笑。ペチュニアおばさんは堪えきれずに、泣き出してしまった。 静観していたエクリプスは、一つため息をついてそばにいたスネイプを見上げる。 彼は、顔を苦渋に歪ませていた。 こうして、レイチェル・ポッターのホグワーツ魔法魔術学校への入学は決まった。 ← |