第二章 魔法学校と案内人



レイチェルは茫然のあまり固まった。表情は何とか動かさなかったが、心情は激しく荒れ狂っていた。エクリプスに尻尾で足を叩かれ、ようやく意識を戻したときには目の前の彼は怪訝な表情でレイチェルを見ていた。


「あ、すいません。私がレイチェルです。とりあえず、中へどうぞ」


体を半身にして道を開けると彼は表情を崩さすに中へ入った。


「これは予想外だった…」


ぽつりとこぼした言葉は誰に聞かれることもなく消えた。
とりあえず、居間のソファに座ってもらいお茶の準備をする、長い話になりそうだったからだ。


「保護者はいないのかね?」
「今は出払っています。おじさんは会社ですし、おばさんは奥様方の交流会、従弟は友達と遊びに。で、何のご用でしょうか」
「私はセブルス・スネイプ。ホグワーツ魔法魔術学校の教員だ。手紙は受け取っているな?」
「いいえ」
「……ホグワーツのことは知っているか?」
「いいえ」
「…自分の両親のことは」
「知りません。おじさんたちは、私を捨てて逃げたとしか教えてくれませんでした」
「なんだと!?」


スネイプは大声を上げた。突然のことに、レイチェルはびくりと肩を震わせた。


「あの、」
「あの狸め……」


教授、心声がただ漏れです。という言葉は何とか飲み込んだ。
スネイプは盛大なため息を吐いた。頭を抱え、考え込んでいるようだった。


「ペチュニアはお前に何も話さなかったのか?」
「はい。男として育てられましたし、あまり外出させてくれません。それに質問すると、怒鳴りつけられていましたから、疑問に思っても答えを聞くことはできませんでした。」


膝の上に乗っていたエクリプスは、初耳だと視線で訴えている。レイチェルはアイコンタクトで、静かにしているようにいった。


「あの、Mr.スネイプはペチュニアおばさんとお知り合いなんですか?」
「ああ……。とりあえずそれは置いておくが、まず、お前は魔女だ。お前の両親も魔法使いだった。今は少々事情により両親は消息を絶っているだけだが、ちゃんと生きている。お前をこの家に預けたのも仕方のないことだった。そして、お前はホグワーツにてその力を扱う術を学ばなければならん」


疲れたように彼は説明し始めた。


「あの、俺にその力があると…?」
「間違いなくある。お前の身の回りでおかしなことがあっただろう?それが動かぬ証拠だ」


レイチェルは小さく頷いた。まだ、制御がうまくいっていないときはよくおじさんたちに怒られていた。



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