最近、どうもオレはおかしい。
ぼうっとすることが多いし、訳も分からなく鼓動がいきなり鳴り止まなくなったり、物をよく落とし、よく転ぶ。
こんな失態、このイケメンでジムリーダーも務める、このオレ様にあってはならない。
否、全くもってありえない事態なのである。

この一大事を、幼馴染のレッドに告げたら、何だか相変わらずの冷めた視線で見られ、一言ボソリ、「…ばか?」と。
うるせえ、馬鹿じゃねえ、と反論すると、「…気付いてないの?」と一言。
なんだ、一体オレが何に気付いていないというんだ。


「あ、グリーン!」

ふと、後ろから聞こえてきた 声。
凛とした、綺麗な声だ。多分、鈴を転がすような声とは よく分からないけどもこういった声のことを表すのだろう、とぼんやり思った。
その声を聞いてから、何故だか急に 鼓動が激しく波打ち始める。
ドクドク、ドク
あまりに五月蝿いそれだから、周りに聞こえやしないかと 冷や冷やした。
何でだ、これ。
今日のオレは、少し おかしい。


「な、何だ なまえかよ」
「何よ、その言い方ー」

ああ、心音が うるさい。
浮つく声、はっきりしない意識。
一体 どうしたんだろう。
少しオレは、おかしい。否、少しどころではないのでは。
何だ、病気にでもなったのか。


「ふん、べ別に いいだろ。折角 美女に逆ナンされたかと思ったのによ」

つい、強く言ってしまう。
意思とは裏腹な口と行動。
口にしてから後悔するのは、いつものことだ。

「な、何よ それ」
「うるせえ。別に、オレ様はな、なまえなんかに話しかけられても 全くもって嬉しいわけじゃ ないからな」

口にしてから、はっとする。
否、これじゃ まるでオレが嬉しいとでも言ってるも同然ではないか。
そりゃ、嬉しいか嬉しくないか とで答えるとしたならば、嬉しいかもしれないけれども。それは少し違って。

脳内で必死に考えをめぐらせていると、なまえをふと見ると


「なっ…」
「…うっ、ひっく」

まさかまさか。
なまえは 静かに涙を流していて。
困った。どうして。
しどろもどろで、どうしたのか 痛いのか?と聞くと、


「…グリーンは、私よりも美女に話しかけられたほうが 嬉しいんでしょ?」
「なっ…」

あんなの、ただの意地はりで。
しかし、なまえは そういえば鈍いやつだ。オレのこんな意地など、気付くはずもなく。
しかし、なまえの涙を見ると どうしてもいてもたってもいられなくって。
ほぼ、衝動だった。


「グ リーン?!」
「…い、いいから 黙ってろ!」


気がつけば、オレはなまえを抱き締めていて。
腕の中の彼女は、見た目よか 随分細く、頼りない感じがした。
ふわり、何となく良い香りが鼻をくすぐる。何となく、好きな香りだ と思った。


「べ、別に 嬉しいとは思ってないけど、嬉しくないとも思ってないわけじゃないからな、」
「…グリーン、よく 分からな い」
「だー!…あのなあ、」

どんだけ鈍いんだ、こいつ。
それでも、いいと思った。
仕方が無い。
彼女のためならば、オレの醜い意地などをも 捨ててしまえと。
喉の奥の方の、熱いそれを叫ぶ。


「好きなんだよ!」
「!…何が?」
「…ああ」

前途多難。先が思いやられて仕方が無い。
だけど、腕の中の彼女は涙は枯れて、どうも幸せそうだったから、良いことにしておいた。



気付け、ばか
(この恋が実るまで、あと 少し)


***
一万企画、耀兎さんに捧げます!
ツンデレグリーンで、ヒロインが泣いちゃってグリーンが焦る..とのリクエストでしたが..
なんだかグリーンのツンデレもよくでてないし、ああなんというか、その すみません..!
この度はリクエストありがとうございました!
沢山の愛をこめて。
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