春の陽射しが当たり、暖かい縁側。平助は大の字になって寝転び、流れる雲を眺めていた。


「平助君、」


ぱっ、と目の前に影が出来たかと思うと、顔を覗くように千鶴が立っている。千鶴は平助が寝転んでいる隣に腰を下ろし、少し膨らんだお腹を見る。


「なぁ、千鶴…。俺さ、ちゃんと父親になれるのかな?」

「なれるよ」

「だって俺、父親の図とか知らねぇから……」


千鶴がお腹から顔を上げ、平助を見る。平助の視線は青空を見上げたまま。


「…私もね、母様の記憶がないから"母親"っていう存在がわからないんだ。だから自分がちゃんと母親になれるか、平助君と一緒で不安だよ?」

「うん…」

「……でも平助君と二人で、私達なりの育て方をしたらいいかなって。何が父親の図とか母親の図なんてないんだから、私達は生まれてくる子をたくさん可愛がってあげて、幸せにしてあげればそれでいいと思うの」


平助が目を合わせると、眩しいぐらいの笑顔で「ね、そう思わない?」と言う。


「でもさ…」

「羅刹の血は心配ないよ。私の鬼の血で無くなってると思うから」


平助は正にそれを言おうとしていのだ。
自分の血が流れているのだとしたら、羅刹の血まで流れていると言うこと。自分だけなら未だしも、子供にまでそれが受け継がれると思うと不安だったのだ。
だが、千鶴の言葉で今まで不安だったことが溶けて無くなるように心から消えていく。


「…千鶴、俺、生まれてくる子にとって恥ずかしくない、立派な父親になるよ。……だから、これからも家族として、夫してよろしくな」

「うん…!」






(生まれてくる子に恥じない親でありたい)






◎あとがき
今回のテーマは"家族"と言うことで、家族が出来ることに対しての色んな思いを書きたくて平千のED後を。子供は親の背中を見て育つと言うので親も恥じない親でいたいのだろうか…、親になることは不安なものなのだろうか、と想像して書いてみました。




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