最初で最後の恋。初恋。生涯でたった一人、私が愛したあの人は化けていた。本当はとても優しいのに鬼の面を被り。本当は苦しいのに平気だと言い張って。

自分を殺した、愛しい人。

けれどそれも戦が終わるまでのことで――。



「歳三さん!洗濯物、まだ干し終わってないんですけど」

むう、と頬を膨らませて千鶴が言う。竿に着物をかけて立っている千鶴の後ろには、彼女が愛した旦那が満足そうに千鶴を抱きすくめていた。

「別に今じゃなくてもいいだろ?もう少しこのままじゃだめか?」

あのころの鋭い視線が嘘のように優しくなり、甘い言葉を千鶴の反応を楽しむかのように舌で転がすようになった。けれど、千鶴はそれを嬉しく思う。彼の言葉に困ったように笑って、

「……もうっ」

と土方の背中に腕を回して自分も彼に抱きつく。土方は嬉しそうに千鶴をぎゅっと引き寄せた。

あの厳しい戦況が嘘のように平和で暮らす二人は、きっとお互いが最後のひととなることを知っている。そして今を大事に、幸せに過ごすことの大切さもよくわかっていた。だから甘えたいときには素直に甘える。それを許しあえる関係だからこそ、きっと今幸せなのだろう。

「洗濯物、あとで手伝ってもらいますからね」

「いつまでも拗ねたふりしてんじゃねえよ、嬉しい癖に」

「う、嬉しくなんか……!」

「顔赤いぞ、ちづる」

うう、と千鶴は俯いた。どうしてもこの人に勝つことはできない。千鶴が弱い言葉もよく知っているから。

「……悪いんですか?私は土方さんが大好きですから」

嬉しいんですよ、と千鶴が言った。かわいい嫁だ。土方は莞爾として微笑し、千鶴の額に口付けた。今日は機嫌がいい、千鶴の頼みを何でも聞いてやろう――。




はつこいぴえろ

いまとむかしがうそのようで、でも、どんなあのひとも大好きです。





2010/12/01
ギリギリ/(^o^)\
甘さメインのサイトなので、甘くしようと思いました(自己紹介じゃないんだぞ)
夫婦が好きです夫婦土千!初恋をしたあの人は道化師のように自分を偽る人でした、的な……道化師についてちょっとぐぐったら違ったんですけどまあいいや。ありがとうございました!

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