「実録!宇宙人は本当にいた?〜恐怖!我々の生活に潜む地球外生命体の影〜」

如何にも、というタイトルのついたTV番組を、千鶴は先程から食い入るように観ている。何が面白いのか分からないが、その眼が余りにも純粋だったため、俺は何も言わずに、ホットココアをいれてやることしかできなかった。こういう手のものは恐がって駄目なのかと思っていたが、そういうわけではないらしい。むしろ、楽しんでいるように見える。邪魔をしてしまわないように読書をしていると、突然千鶴がこちらを振り返った。やはり怖くて根を上げたのかと思ったが、成る程、画面はCMに切り替わっている。


「一さんは、宇宙人ですか?」


「……、は?」


「そんなわけ、ないですよね。宇宙人なら、私が今何を考えてるかも分かるはずですし……」


俺は、確かに宇宙人ではない。しかし、千鶴の考えていることを理解できていない、と言われるのは少しばかり気に障った。宇宙人でなくとも、分かる場合もあるからだ。それは、俺が今まで千鶴を見てきた中で培われた力であり、俺はそれを誇りに思っている。「千鶴は今、UFOに乗りたい、と思っている」


「……っ!?ははははじめさん!?どうして分かったんですか!?一さん、宇宙人なんですか!?」


「いや、俺は、宇宙人ではない」


「嘘吐いたって無駄です!」


わあー、一さんは宇宙人なんですねー!と嬉しそうに飛び付いて来た千鶴をどうすることもできず、俺は宇宙人決定になってしまった。こういうとき、千鶴を傷つけずに否定するには、どうしたら良いのか、誰でも良いから、この際宇宙人でも構わない故、教えてもらいたい。しかし、CMが終わった瞬間、千鶴はいつもののんびりさは何処へやら、物凄いスピードで俺から離れ、TVの前に正座した。次の特集は、UFOの目撃談についてらしい。当てずっぽうで言った、UFOに乗りたがっている、というのが正解したのは、これのお陰か。


「UFO乗れたら、良いですよね」


「何故だ?」


「だって、渋滞もないし、海外旅行も行き放題なんですよ!?」


技術が進歩し、皆がUFOに乗れるような日が来たとしたら、空も今の道路のように渋滞するであろうし、海外旅行は領空の問題もあるため、行き放題にはならない。そう伝えてやりたいのだが、千鶴の瞳がきらきらと輝いていたため、やはり俺は何も言えなかった。


「新婚旅行は、月に行きたいです」


「そ、そうか」


不思議な経緯により、俺は宇宙人ということになってしまった。だが、残念なことに、人間である俺は、UFOを開発する能力など持っていないし、月に行くほどの金も持ち合わせていない。しかし、それでも。千鶴が笑ってくれるのなら、たまにはこのような下らないTV番組も悪くはないな、と少しだけ思うことができた。


アダムスキー


「一さんっ、本当の姿を見せてください!」
「いや、千鶴、だから俺は宇宙人では……!」
「私、一さんが宇宙人でも構いませんから!」
「ちょ、いた、かっ、髪を引っ張るな!」




アダムスキー型:最もポピュラーな円盤型UFOの名称。

自由に飛び回って、いつか誰かの心にふわりと着地できますように。
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