小さい頃から、私には生まれるずっと前の時代の記憶がある。所謂前世の記憶ってやつ。
しかし、不思議なことに名前も容姿も全て同じ。でも、唯一違うことは私の隣にあの人が居ないってこと。
自分が行ける範囲で探してみたが、何処にも居ない。あの人と似た後ろ姿を見ると、間違って声をかけてしまうことなんて、何度もあった。

皆に逢いたい、あの人に逢いたいと思いが膨らむ。
幼かった私は、その思いを一人で抱えることが出来なくなり、一度母に話したことがあった。母ならわかってくれる、信じてくれると疑わなかった私に、母は『頭がおかしい』の一言で片付けた。

私は誰にも話せない苦しさから、自分で自分の前世の記憶に蓋をしようとした。そうしたら少しは楽になれると思ったから…。でも結局、蓋を仕切れなかった。
皆と過ごした日々。短かったけれど、あの人と二人で過ごした幸せな日々。――そして最期に交わしたあの約束を忘れることが、どうしても出来なかった。

そんな私も、この春で社会人となった。
この世に転生してきてから、何年も探し続けてきたのに今だ逢えていない。私はいつしか皆と会えることを諦めていた。


「時が過ぎるって早いなぁ……」

『千鶴ちゃん!前、前!』

「えっ?…きゃあっ!?」


ぼうっとしていたせいで隣を歩いていた友達の声にも気づかず、前から歩いて来た人とぶつかる。


「す、すみません…!」

「悪ぃ…って、千鶴…か?」

「嘘…。原…田さん……?」

「……!千鶴も記憶があるんだな」


隣で驚く友達には先に行っててもらうように言い、二人で歩く。


「千鶴と会えてよかったぜ。俺達、ずっと千鶴を探してたんだからな」


あの頃みたいに笑顔で私の頭を撫でる原田さん。


「原田さん、あの…"俺達"って…もしかして皆さんも……」

「ああ、いるよ。土方さんもな。――ほら、ここだ」


原田さんに連れられて着いた場所。そこは同じ会社内で、私と部署が違う部屋。ここを開けるとあの人――歳三さんに会えるんだ。
逸る気持ちを抑え、目の前の扉を開ける。パタン、と開かれた扉の向こうには懐かしい顔ぶれがあった。


「あっ、左之さんお帰り。って…えっ、も、もしかして千鶴!?」

「千鶴ちゃんだ」

「久しぶりだな、千鶴」

「…皆さん、お元気そうで良かったです」


変わらず向けてくれる皆の笑顔に鼻の奥がツン、とする。
と、後ろからふわりと抱きしめられる。


「――千鶴」

「…と…し…ぞうさん。歳三さん…!」

「あ〜、土方さんが千鶴ちゃん泣かしてる」

「うるせぇよ。……千鶴、会いたかった」

「私もです…」

「もう手放さないからな」

「はいっ……!」





色の糸で結ばれて


『来世で逢えたそん時は、一生手放してやらねぇからな。覚悟しとけよ――』






◎あとがき

今回のテーマが"サイト名"だったのに、思いを上手く伝えきれていない…。皆が幸せになっていたらいいなぁという思いを込めたつもりです。



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