「例えるならば一一一」






ごうごうと外で雨風が激しく唸る中、言葉を続ける









「すごく、強かったです。…新選組は土方さんたちは、私、を」








「…お前を?」







その先を話したいのに溢れてくる涙は止められない



私に彼らの最期を見ることは叶わなかった。間に合わなかったのだ。








そんな私を憐れんだのか風間さんはひとりぼっちの私の手を引いて「帰るぞ」と言った




彼は私にどこに、と問う間も与えずに手を引いて歩いた





着いた先は風間さんの大きなお屋敷で、私を迎え入れるための部屋が用意されていて。








皆を追いかけてばかりの私を待っていてくれていたのは風間さんが初めてだった





そして私に問う







あいつらはお前にとってどんな存在だったのか、と

























「私、を…っ」





「……」






「…っ、とても、大事にしてくれました」





涙はまだ、とまらなかった







彼らに出会っていなかったらこんな思いをせずに済んだのかもしれない、けど、けど…









風間さんは私の目尻を指で掬う









「お前は、幸せだったのか」




「……幸せ…でした」
















「…そうか、ならば生きろ」








「…生きる、なんて」

できない、と言葉を続けようとしたそのとき、真っ暗な外が一瞬明るんだ



そして大きな音とその振動に私は肩を跳ね上げる






「っ…!」






余程近かったのだろうか

こんなに大きな雷は初めて聞いた





心臓はどくんどくんとうるさく鳴っている








ああ、私は生きているんだね








こんなに近くにいるのに彼がどんな顔をしているのかすらわからないほど視界は滲む











「千鶴」








あんなにも恐れていた声色もこの腕もこんなにもあたたかく、優しかった


























外の嵐は朝になったら過ぎ去っているのだろう



彼らのように

















颱風


過ぎ去りし後はいたく恋し












20101204

企画サイト「恋、募る」様に提出

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