すとん、と腕を引けばまるで重さがないかのように千鶴は土方の膝の上に納まった。後ろからぎゅっと抱きしめる。どくん、どくん、どくんと速めの鼓動が聞こえてきた。なんだ、まだ慣れずに照れてるのか。

「土方さん……いきなり、どうなさったんですか?」

恥ずかしそうに頬を赤らめて千鶴が訊いた。ん、と微笑で誤魔化して腕に力を入れる。柔らかく、温かい。なんだか今はどうしようもなく千鶴を抱きしめていたい気分だった。

「んう……ひ、じかたさ……苦しいです」

力を入れすぎたのか、千鶴が言う。

「悪い、」

とりあえず謝って少し力を抜いた。千鶴の体からも無意識のうちに入っていた力がするりと抜け、とん、と土方の胸に体を預ける。甘い、千鶴の香りが漂いくらりとした。

そして、今度は苦しくならないように極力優しく抱きしめ、首筋に顔を埋める。

「ひぅ……っ土方さん!?」

擽ったかったのか、千鶴は素っ頓狂な声をあげて体を強張らせた。反応が大きくて、ついつい構ってやりたくなる。だから、つい。ぺろりと舌で彼女の首筋を舐めあげた。

「ひゃあ!ちょ、ちょちょっと何するんですかあっ!」

顔を真っ赤にした千鶴が振り返った。くつくつ笑えば、千鶴は怒ってむっとする。

「悪い、千鶴」

「さっきもそれでしたよ?」

どうやら拗ねてしまったようだ。そっと髪を撫でる。するすると、柔らかくて指どおりがいい。

「千鶴。分かってくれねえか」

「何をですか」

「お前に構いたくて仕方ねえんだよ」

「な……」

ぽかん、と千鶴はこちらを見た。その頬にそっと口付ける。柔らかい、そして何だか……甘い。

「土方さ……」

「千鶴」

「……はい」

「千鶴、好きだ」

「……私も、好き、です」

満足して言ってくれた唇に、口付ける。甘い、甘い……とろけるような愛しさと、幸せ。
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