朝顔とアイス







 小学校の時。
アサガオを咲かせる夏休みの宿題があった。
真広とどちらが先に花を咲かせるか勝負を試みた。





 最初は同じ時期に芽が出てきた。
すくすく育っていった。
真広のアサガオだけ。





 "「どうしてわたしのは咲かないの?」"




 泣き出してしまったあたしをなぐさめるため真広はアイスを買ってきてくれた。






 "「ぼくがト●ロの踊り毎日するから」"



 ト●ロの踊りとはジ●リの大人気アニメのキャラクターが草木を成長させる踊りのこと。
小学生の時、流行った。




 "「ん〜っばッ!!」"




 真広は毎日踊ってくれた。
でも花はいっこうに咲かない。
泣きはしなかったけどあたしの絵日記には毎回『まだ花咲かない。』とだけ描いていた。






 ある日





 花が咲いた。
しかし真広の花がなくなっていた。





 真広が根っこごと植え替えたらしい。




 結局二人のアサガオは枯れてしまった。





 "「真広」"




 "「…」"





 「アイス…。」





 あの後アイスを二人で食べた。
なんてことのない思い出話だ。
ただアイスとアサガオをみて思い出しただけ。




 今、あたしの家と真広の家との真ん中に咲いているアサガオを見つめながらアイスを食べる。
もう何年たつんだろ?





 「お、由衣ーッ!!」





 「真広…」





 真広の家の二階から顔を出していた。





 「お前もアイスタイムかよ」




 真広は右手に持っていたアイスを見せてくる。
あたしもつられてアイスをかかげる。





―グシャッ




 「あ…」






 真広のアイスが落ちた。





―グシャッ





 あたしのアイスもつられるように崩れた。





 地面に落ちているアイスの残骸をみる。
アイスの棒には"アタリ"とかいてあった。





 「あたった…」


―ガチャ





 いつの間にか下に降りて外に出てきた真広。
パタパタ走ってきた。





 「あたった?」





 「あたった」




 マジかよ、と笑いながら財布をポケットから取り出す。
そして財布を振り回しながら




 「アイス買いいくからつきあえ」




 と、歩きだす真広。
隣まで走ってアタリ棒を握る。





 距離はいつもより離れて。







 

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