先輩と傘
放課後は雨が降っていた。
あーあ傘忘れた。
真広なら傘持ってるかな?
探してみるか。
「あれー?由衣ちゃんじゃん」
と下駄箱から上履きを履き替えようとしていたら勇気先輩がいた。
「こんにちは」
「こんちは、どうかした?」
こっちに近づいてきた。
「いえ、真広さがそうかと」
「真広なら今女の子に呼び出されてるよ」
…女の子?
「用事あるなら俺も一緒に待つよ?」
「いえ、そんな大事な用事でもないんで大丈夫です」
傘…。
仕方ない。あきらめるしかない。
「うわ、雨かよ;」
先輩は傘を取り出す。
…いいなぁ…。
「ん、一緒に帰ろうよ?」
「あー、えー・・・と」
「あぁ傘ないの?」
「う…」
気づかれた。
今日天気予報無視したのが悪かったなァ。
「ホラ、おいで?」
と傘をさして手を招く勇気先輩。
なんかちょっぴり恥ずかしいけど中に入らせてもらう。
「ねぇ先輩?」
「んー?」
聞きたかったこと。
「なんであたしのこと知ってたんですか?」
「あー、それかぁ…」
狭い道に入ったときだった。
大きめのトラックが走ってきた。
―ガバッ
「ちょッ!!!?」
抱きしめられた。
急だったからびっくりした。
―バシャアアアアッッ
水しぶきがあがる。
でもあたしには冷たい感覚はなくて、先輩の暖かさだけが感じられた。
要するに先輩が守ってくれた。
「せ、先輩、大丈夫ですか!!??」
きっと背中はびしょびしょだ。
でもいっこうに離してくれない。
「あー、つめてー」
「せんぱ…」
ギュッと力をこめて抱きしめられる。
口がムグムグする。
「由衣暖けェー」
「そんなのん気なこと言ってないでください;近くにあたしの家あるんでお風呂入ってください」
やっと離れた先輩は嬉しそうな顔をしていた。
「一緒に!!!???」
「違います!!!」
「なにやってんスか先輩…?」
と、怒った真広の声が聞こえた。
なんで、怒ってるの…;;
「真広じゃん、女の子は?」
「さァ?」
なんだかギスギスしてる;;
「メール、気づかなかった?」
と真広があたしに言う。
携帯のことなんて忘れていた。
見ると、着信が4件、新着メールが17件もあった。
すべて真広からだった。
「な、なんかいっぱい…;」
「傘、どうせ持ってないだろうから一緒に帰ってやろうと電話した」
お、怒ってる…;;;;
「ごめんなさいッッ」
「まぁまぁいいじゃない、さぁ帰ろう!」
と先輩があたしの肩を抱いて歩きだす。
「先輩家逆でしょーが。」
え、そうだったの!!!???
わざわざ遠回りしてくれてたんだ…。
「いやぁ由衣の家にようがあるからさッ!!」
「あ、はい」
うなずくしかなかった。
「なんで?」
真広があたしに聞いてきた。
うーん、どっから説明したらいいの!?
「俺がぬれちゃって由衣の家でお風呂いれてもらうことになったから」
「風呂ぉ?俺の家でいいじゃないっスか、決定。由衣もくるか?」
先輩に命令した…。
そしてあたしも真広の家にお邪魔することになった。
(なんで怒ってるの?)
(うるせー)
(???)
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