理由なんて




 学校が始まり数日がたった。
期限切れの宿題をカバンにつめて制服に着替える。





「いってきまーす」





 うわ、暑!
外はまだ真夏だっての…。





 真広とはその後メールも一切しなかった。
カーテンも大抵閉めきったまま。
なんと言うか、非常に気まずい感じ…。





「はぁ…」





 真広に好きって伝えたいのに。
距離が離れて行くばかりで。
もう手を伸ばしても届かないくらい離れちゃったのかな…。





 学校につきクラスに入る。
おはよーとか友達じゃない友達に上っ面だけの挨拶を交わし、B組に向かった。





「彩斗、おはよ」


「おはよう」





 既に椅子に座り、一時限目の授業の支度をしていた。





「夏休み終わっちゃったねー」


「そうだな」





 フッと笑う彩斗ちゃんはいつも以上に綺麗だった。





「なんかあった?」


「なんで」


「すっきりした顔だから」





 彩斗の髪をいじる。
いいなぁストレート。





「僕もわかったんだ」


「と言いますと?」





―キーンコーンカーンコーン





 丁度いい時にチャイムが鳴る。
んもー…。





「じゃあ彩斗、また後でね!」


「うん」





 ちょっと急いで教室に戻る。
途中階段で真広に会った。





「お、はよう」


「…はよ」





 うわ、きまずい…。





「今日は、遅いね…」


「あぁ」





 …なんか、もうだめなのかな。
立ち止まって真広の後ろ姿を見る。
途中気づいて真広が振り返った。





「どうした?」


「う、ううん…」





 どんどん遠くなってく。
いやだよ、こんなの。
好きだよ、好き。
もっと近くにいたいよ…。





「由衣?」





 気づいたら真広は目の前にいた。
間近で見るその顔はいつ見ても緊張する。





「…お前、この間勇気先輩と何してたんだよ」


「え?」





 勇気先輩…?
海に行った夜のことを思い出す。
きっとあの時だ。





「何も…」


「嘘だ、二人きりで何してた」


「話してただけだよ…」


「何をだよ」


「…なんで、そんなこと聞くの?」





 ずいずい近づいてくる真広は怖い顔をしていた。





「なんでも、だ」


「恋愛相談だよ…」


「…お前好きなやついんのか」


「う、いや、えっと…!」





 ガシッと腕を捕まれ使われていない教室に連れていかれた。





「え、ちょ…///」


「誰だよ、それ」


「へ?!」





 真広にずいずい押され逃げられない体制になった。





「好きなやつ、誰だよ」


「な、なな?!」





 怖い顔をして上にまたがってきた。



「言えよ」


「…言ってどうするの」


「さァね」





 意地悪そうに笑う真広に力が抜ける。
恐怖心さえ出てきた。





「ずっと一緒にいるとさ、知らないことがあるとイラつくんだよね」





  ジリジリと近づく真広の目は落ち着いていて全く読めない。





「お前告白されたことないだろ?」


「う、ん…」


「なんでだと思う?」





 あれ、ちょっと待って。
こんな会話した覚えがある。
海に行った日の夜の先輩との会話を思い出す。



"由衣ちゃんってさ、結構モテんの知ってた?」"

"い、いや…え?"

"だーから3年の間でも有名なんだよ"

"で、でも告白なんてされたことないですし…"

"なんでだと思う?"



 なんでって…。





「あれ、俺のせい」





 その時気づいた。
真広の手が震えていた。





(なんで焦っているの?)
(なんで強がっているの?)
(ねぇ、真広…)


 

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