あ、暑い…。
セミの声が余計僕を苛立たせる。
庭に咲いている花に水をやり買い物に行く準備をする。






 「お母さーん、買い物行くけど何か買うー?」




 二階にいるであろう母に階段から叫ぶ。
階段から降りてきた。



 「そうねー…、じゃあスイカでも買おうかぁ、暑いし」



 「スイカ?!」




 母は夏であろうと冬であろうとだれる習性がある。
てゆーかもうダメ人間なのでは?!




 「だってー、彩斗ちゃんも好きでしょースイカっ」




 嬉しそうに微笑む母。
仕方ない…。




 「ハァ…スイカだけでいいの?」




 「うんー、あとアイスもー」



 「はいはい」




 甘やかしすぎかな?




―ガチャ




 「暑っ」





 熱気がむわっと僕を襲う。
セミの声がよりいっそう大きくなった。
もう汗が垂れそうだ。





 商店街の文房具屋まで行く。
ノートが一冊終わってしまった。




―カラカラカラ




 古臭い建物の古いドアを横スライドする。
店は冷房が効いているのだがそれはかなりぬるいものだった。




 「いらっしゃい」




 お店の奥にはおばあちゃんが座っていて時々お菓子をくれる。




 「もう少し冷房効かせてもいいんじゃないか?」




 「戸宮んとこの娘か」




 おばあちゃんは母のことを昔から知っているらしい。
眼鏡をかけたおばあちゃんはにっこりとこちら見ている。




 「こんにちはおばあちゃん」




 「こんにちは。冷房はこのくらいで丁度いいのよ」




 お互いお辞儀をする。
丁度いいってゆーかこれなら冷房つけなくてもいいんじゃ…。




 「だんだんとお母さんに似てくるねぇ」




 「冗談はやめてもらおうか」




 あんなだれてはいない!




 「ふぇっふぇっふぇ、そっくりだよ」





 「もー…」




 おばあちゃんの前にノートをおく。





 「150円だよ」




 お会計をすまして出て行く。




 「またおいでー」




 ふにゃりと笑うおばあちゃんは手を小さく振っていて私も思わずふりかえしてしまう。
おばあちゃんは優しい。





 今度は八百屋まで行き、スイカを買う。
すると見覚えのある後姿の少年が肉屋さんの前にいた。




 「おばさん、このコロッケいっつも最高だねーっ」




 この声といいやっぱり柊くんだった。
確かにここのおばさんの手作りコロッケはおいしい。
しかも80円。




 「ありがとう愛ちゃん」



 愛ちゃんと呼ばれているのか。
なんて思っていたらおばさんと目があう。



 「あらー彩斗ちゃん!」



 今大声で呼ぶのはやめてほしい。
しかしいつもお世話になっているおばさんなので頭を下げる。
そして柊くんと目が会う。




 「あぁああッッ!!!彩斗ちゃん!!!!」


 勢いよく走ってくる柊くんをよけて八百屋まで行く。
あ、スイカいっぱい売ってる。




 「休日にも彩斗ちゃんと会えるなんてもう運命だよね!!!」




 くっついてくる柊くんを無視していいスイカを選ぶ。




 「おや彩斗の彼氏かぁ?」



 なんて八百屋のおじさんが茶化す。



 「違いま「そうでーっす」ちょっ!!!」



 柊くんが調子に乗る。
頭に軽くチョップをくらわす。







 「嘘はよくないんじゃないかな」








 ベシベシと頭を叩き続ける僕。








 「あっははごめんごめん!そーだ!今から彩斗ちゃんの家行こうかと思ってたんだ!!」








 …はい?












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