「彩斗ちゃーん、お弁当食べましょーい」






 最近柊くんとお弁当を食べる。




 しかし、一つ疑問がでる。
…前食べてた人はどうなったんだ?
仮にも人気の子なんだろ柊くんは。





 「柊くん」





 「なぁに?」





 ニコニコと微笑む柊くん。
う…、可愛い…///





 「んと、君と前食べてた人はどうしてるんだ?」





 「あぁ屋上にいるよ?行く?行こっか、行こうッ!!」






 「え、ちょっとまっ…」









 抱き抱えられて屋上につれこまれた。
なんてことだ。
後悔だ。









 「着いたぁ、おっくじょーう」




―ガチャッ






 フワッと涼しい風が吹きこむ。
気持ちいい。
思えば高校の屋上はこれで2度目だった。





 「お、愛之助ー!!久々に一緒に食うかぁ?」




 声の方向には以前会った夢希くんだった。
もう名前呼びになってしまった。





 「おー夢ちゃーんっ、真広はー?」





 「夢ちゃん言うなぁッ!!真広なら教室じゃね?」




 近づくと夢希くんの前には購買で買ったようなパンが4つ並んでいた。





 「真広はね、いつもは由衣ちゃんと食べてるからたまにしかここで食べないんだよぉ」






 由衣ちゃんか、…ん?
あれ?





 「藍川くんはたまにしかこないってことは最近は夢希くん一人なの?」






 「あー…、さぁ?」





 さぁって…。





 「…一人だよ」




 「あ、そうだったの?!ごめんねぇ今度から俺と彩斗ちゃんが一緒に食べるから!!」



 「な、何を勝手に…!!」




 チラッと夢希くんを見ると輝いた顔をしていた。
うっ…これでは断れないじゃないか…。




 「…しょうがないな…」



 「本当か?!サンキュー戸宮!!!」―ガバッ




 勢いよく手を握られた。
よく見ると、柊くんと絡んでいるだけあって顔が整っている。
イケメンにはイケメンが集うのか…。




 「あああああ!!!ちょ、何手握ってんの!!彩斗ちゃんも抵抗しなさーい!!」



 ハッ!!
柊くんに言われるまでボーッとしていた。
夢希くんも気づいて一気に手を離した。




 「わ、悪ィ戸宮…///」



 「いや、僕こそごめんなさい…?」




 何であやまってるんだ僕は?





―ガチャ




 「なんだ、やっぱ愛乃助たちいるじゃん」



 と扉の開く音と声が後ろから聞こえた。
見ると藍川くんと一人の女の子がこちらに向かって歩いている。




 「あー、ホントだぁってあの女の子ってもしや彩斗ちゃん?」



 女の子がこちらを指差してくる。
指をさすな指を。



 「あ、あれは真広と由衣ちゃんではないかぁーっ」



 柊くんが手を大きく広げて呼ぶ。
あれが、空実由衣さんか…。
藍川くんの…。




 「よー戸宮久々だな」



 と夢希くんの隣に腰掛ける。



 「そうだな」



 お弁当を食べながら返事する。
今日の玉子焼きはうまく焼けたから美味いな。
チラッと空実さんを見ると気まずそうな顔をしてこちらをみている。



 「あっ…う…」



 目が合うと急に焦りだす。




 「そ、その玉子焼きすごく美味しそうだなぁって…」



 「…食べる?」




 玉子焼きを箸で摘んで空実さんの前に差し出す。
空実さんは驚いた顔をしている。



 「食べないの?」



 というと空実さんはすごい笑顔で



 「あーんっ」



 と言って食べた。
子供っぽい…。
でも可愛いな…。



 「すごくおいしいよ!!彩斗ちゃんの手作り?」



 キラキラした目で聞いてくる。
なんか、久々に女の子に名前で呼ばれたなぁ。




 「うん、今日はよく焼けたから」


 「ちょ、彩斗ちゃん!!俺にも!!!」



 柊くんが飛び入り参加。



 「やだ。」



 もちろん断る。




 「あ、俺も食いたい」



 またもや飛び入り参加…。
誰かと思えば夢希くんだった。



 「…ん」



 夢希くんなら別にいいか。
玉子焼きを差し出す。



 「さんきゅ」



 と口を開ける夢希くん。



 「だめえええええええッッ」



―パクッ



 と柊くんが夢希くんをどかして玉子焼きを食べた。



 「ちょっ、愛乃助ー」


 「なんで夢希が(俺の)彩斗ちゃんの玉子焼きをあーんなんて行為で食べようとしてんの?!」



 口をモゴモゴしながらしゃべる柊くん。



 「おい柊くん、口の中のものがなくなったらしゃべりなさい」



 と注意すると黙ってモゴモゴし始めた。



 「お前ら元気だな、俺ちょっと寝る…」



 と寝転がり寝る体制に入る藍川くん。
なんだか気持ちよさそうだ。



 「あたし自販機行ってくる!」



 突然立ち上がる空実さん。



 「俺炭酸系頼む」



 寝ていた藍川くんが手をあげる。
そして柊くんが「牛乳ー」夢希くんが「いちごオレ」と注文する。



 「もー…、彩斗ちゃんは?」



 「…一緒に行く」




 学校の自販機で飲み物を買ったことがなかった。
と言うか一人で買う勇気がなかった。



 「?じゃあ一緒に行こうか」







(彩斗ちゃんの初めての自販機だね)
(初めて?)
(そう、多分自販機でジュース買ったことないよ!)
(今時そんなやついんのか…)
(珍しいよねー)












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