―ガタンゴトン
「うっわぁー!!愛之助くん、海だよ海ーっ!!!!」
「泳ぐぞォオオォオオォっ!!!」
「お前ら子供か」
…あぁ…。 あっとゆーまに電車に乗っている。 空実さんと柊くんがはしゃいで藍川くんが呆れて本を読んでいる。
「戸宮がくるとは思わなかった」
「無理矢理だ、夢ちゃんこそ暇だったんだな」
「夢ちゃん言うな!!こっちは先輩と電話してたのによぉ…」
「先輩?」
「…あぁ、ちょっとな」
夢ちゃん(夢希くん)は携帯をいじりながら話す。 チラッと画面を見ると男の名前だった。
「なんだ男か…」
「んなッ見んなよ///!!」
「彼女かと」
「…///」
…え?! なんで否定しないのだ?! なんで顔赤くする?! 男だろ?!
「な、なぁ…恋愛に性別は関係あると思うか…?」
「…す、好き同士ならいいんじゃね///?」
「…だ、だな」
…。 人それぞれだよな…うん。
―ポス
肩が重くなる。 柊くんが顔を乗せてきたからだ。 てゆーか寝るな…。
「愛之助寝るの早ぇな…」
「…重い…」
「あんま揺らすと起こしちゃうぞー」
「うっ…」
藍川くんがニヤニヤしながらこちらを見る。 読んでいた本を閉じて携帯をこちらに向ける。 ちょっ、まさか…!!
―カシャッ
「ちょ、やめないか!!」
「お、いいねぇ真広、あたしに送っといて!」
「あ、俺にも」
「や、やめッ」
「動くと起きちゃうぞー」
「うぅ…」
カシャカシャと撮られる。 すごく恥ずかしい…///
「あ、彩斗ちゃん、メアドちょーだい!」
「何故?」
「んー、友達だから!」
「だからな「携帯貸してっ」あ、ちょっ!!」
動けない僕のポケットから携帯を抜き出す空実さん。 ピッピッと操作し赤外線通信を開始したようだ。
「はい、これでよーし!愛乃助くんのアドもいれとく?」
そういえば家に来たときは急いでいたからアドレス交換はしていなかった。
「彩斗ちゃん?」
「べ、別に必要ないだろう」
「えー」
「と、言うか…空実さんは…その、柊くんのアドレスを持っているのか?」
「うん、持ってるよ?」
「…そうか」
「あ、違うよ!?これは、その相談とか、するためにね?!」
「…一応言っておくが、君が今思ってることは間違っているからな?」
「…」
無言になってしまった。 なんであんなこと聞いてしまったんだ? 別にいいじゃないか。 アドレスくらい持っていて当然いいじゃないか。 友達同士なんだから。 友達…。
「戸宮、ほら海見えてきた」
夢希くんがヘラヘラ笑いながら写真を撮っている。 無邪気な態度に僕も空実さんもつられて車窓から海を見る。 綺麗、だ。 これは、柊くんも観ておいたほうがいいだろうな。
「ん、ぬぅ…」
目をこすりながら起き上がる柊くん。 あれ、起きた。
「ほら愛乃助、海だぞ!」
「ん…海?…う、み…海ー!!!!」
勢いよく飛び起き窓におでこをくっつけて海を見つめる。 嬉しそうだな。
「彩斗ちゃん、起こしてくれてありがとう!!」
「…え?」
偶然起きたんじゃない。 偶然起きたんじゃなくて僕が無意識に肩を揺らして起こしてたんだ。
この景色を、見せたいと思った。 この景色を、一緒に…。
次の駅で電車をあとにする。 揺れる車内で、僕は隣の君を無駄に意識してしまった。
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