4 ご飯を食べ終わり、部屋に戻る。
今日は歌の収録があるのでクオくん、ミヤくん、レンくんはマスターに呼び出されていた。
アメ
「(それにしても…)」
胸に手をあて、心拍を確認する。
アメ
「(ドキドキが止まんない…)」
歌の歌詞なんかじゃよくあるような気持ちなのだが、改めて考えるとめちゃくちゃ緊張する。
―コンコン
誰かがドアを叩く。
アメ
「はい?」
グミ
「女子会しよー」
アメ
「女子会?」
開けるとグミが可愛らしくニコニコしていた。
女子会って今流行りのあれかな?
グミ
「いーからリンの部屋に移動だー!」
アメ
「おーっ」
リンの部屋。
テーブルの上にはお菓子が積んである。
チョコやクッキー、飴とかグミとかスナックとか。
ちゃんと紙パックのアップルティーも用意してある。
リン
「見てみて、新発売♪」
グミ
「おぉ、是非味見しなければ!!!」
アメ
「すごい量ですね!」
リン
「話してたらすぐなくなっちゃうよー」
八重歯を少し見せながらにっこり笑うリン。
そのリンの手にはすでに新発売のお菓子が既に袋から出されていた。
リン
「はいアメあーん」
アメ
「あー…ん」
これはなかなか…
アメ
「素朴な味ですね…」
リン
「ん…確かに…」
グミ
「あたしはイケるなー!はい、ミクちゃんもっ」
グミはミクの口元にお菓子を近づける。
雑誌をパラパラめくって何かを探しているミクは一度起き上がりお菓子を口にする。
ミク
「ん、僕もイケるっ!!ピーチティー取ってー」
アメ
「はーい」
リン
「何探してるの?」
ミク
「んー…あった、ネイル講座!」 そのページはまさにネイルだけのページだった。
華やかに爪を飾ったり、綺麗な色を塗り、キラキラさせたり。
グミ
「最近やったばっかじゃん?」
ミク
「アメの爪をやりたくってね!」
アメ
「えぇ?!」
既に用意を始めているミクを横目に違うお菓子に手を伸ばす。
グミ
「ねー、思ったんだけどアメ、クオくんに告白されたでしょ」
アメ
「ブッッな、なな、なな…///!!???」
なんでわかるの!!???
グミはいたってまじめな顔でスティックスナックをさくさく食べている。
グミ
「だっておかしーし」
リン
「ね、返事は、返事はー!?」
リンは好奇心しかないようだ。
アメ
「いや、その、えーと///」
グミ
「ミクもクオに協力してたって感じだよねー?」
え、そうだったの?
ミク
「んーって言ってもほとんど何もしてあげられなかったけどねー」
アメ
「…///」
なんだか照れくさくて何も言えなかった。
これは恋ばなって呼べるものなのかな?
ちょっと前までは誰かと話したりするのもなくて、恋とか考えられなかったのにな。
歌えるだけで幸せなのに、友達とか好きと言ってくれる人がいるなんて…。
アメ
「私、ここにいられてよかったな」
グミ
「なんだー急にー?」
アメ
「なんとなくです♪」
ミクがニコニコしながら私の手をとる。
ミク
「ね、何色がいい?」
ネイルの色のことだろう。
アメ
「じゃあ青っぽくお願いします」
ミク
「了解ーっ」
右手を預けて、左手では雑誌を開く。
またどこかのボーカロイドさんがCDデビュー。
いいなぁ…。
グミ
「できるよ!!」
アメ
「え?」
グミ
「あたしたちもCDデビューできるよ!!!」
リン
「うん、マスターの家の子だもん、絶対できる!!」
アメ
「…はい!」
いつか、"家族"みんなでCDデビューしたいなぁ。
すごく楽しいだろう。
グミ
「ミクってこうゆーの上手だよね」
ミク
「んー…誰かのためになにかできるって嬉しいからかな」
ミクは誰よりも頑張り屋だ。
歌だってそうだ。
朝早くから練習して、明るくて自然に笑ってくれる。
ミク
「はい、できたっ!!」
ミクの嬉しそうな笑顔を見て自分の指先を見る。
アメ
「綺麗…」
海のように綺麗だった。
キラキラと輝いてずっと見ていられるような気がした。
グミ
「アメらしいね」
アメ
「そう、ですか?」
グミ
「うんっ、今のアメみたいにキラキラしてる」
アメ
「私、こんなにキラキラしてないですよ…」
グミ
「してるよ、嬉しそうなアメはいつもキラキラしてる!」
グミちゃんの言葉に照れながら何度も指先を見る。
グミ
「きっと、みんなアメのそういうところを好きになるんだろうな」
へらっと笑うグミちゃんはお世辞なんて言ってる様子ではなかった。
恥ずかしくなって膝の上にあったクッションに顔を埋めた。
ミク
「アメ」
アメ
「?」
改まった声のミクちゃん。
顔をあげて目を見る。
ミク
「クオも真剣にアメが好きみたい」
アメ
「う、ん」
ミク
「多分初めてなんじゃないかな、クオに好きな人できたの」
そうなんだ…。
なんだか余計恥ずかしくなる。
ミク
「だから、ちゃんと考えてほしいんだ」
アメ
「…」
ミク
「どんな答えでもちゃんと伝えてあげてほしい」
アメ
「…うん」
ミク
「それが、クオにとって一番の幸せなんだと思うから…」
アメ
「…大丈夫ですよ、クオくんの想いは届いてます」
ミク
「そう、だよね…」
アメ
「適当になんて考えません」
ミク
「うん、ありがとう」
アメ
「ミクはクオくんをとても大事に想っているんですね」
ミク
「うん、クオには幸せになってほしいし…」
そうつぶやき、ミクはお菓子を加えてベッドに転がった。
そしてにやっと笑う。
ミク
「リンもグミも、自分の相方にサポートしなくていいのかい?」
リン&グミ
「!!」
アメ
「サポート?」
リン
「アメ、ゆっくり考えてて!!」
グミ
「そうそう、クオくん以外の人もいるかもだし!!」
アメ
「え、えぇ?」
そう言いながら、女子会とやらは終了となった。
「作戦会議してくる」と言い残したリンとグミはそれぞれ違う場所に向かっていった。
余ったお菓子を摘まみながら後片付けをミクとする。
アメ
「どうしたんですかね?」
ミク
「さーね?アメはこれから忙しくなるよ!」
アメ
「?」
忙しくなるのか…?
爪を見直し、頑張ろうって意気込んだ。
部屋にもどったら歌の練習でもしようかな?
ミク
「ごめんねクオ、恋敵の火をつけちゃったかも♪」
ミクオの部屋の前でそう呟いたミクは楽しげな表情だった。