お前ら、遊ぶぞ | ナノ





ドミノ倒し









―ガラッ






涼介
「うぃ〜す」





いつものように涼介先輩が遅れて部活にやってくる。
部長のくせに…。





涼介
「なんだよ、お前だけ?他の奴らは?」





部室に私一人だけが座っていたことに気づいた涼介先輩は首をかしげる。
そう、今日の私は帰ろうとせず一人で部活が始まるのを待っていたのだ。





姫香
「見ての通り誰も来てませんね」


涼介
「ふーん…姫香と二人きりか」


姫香
「二人きりですねー」





カバンを置いて席に着く涼介先輩。
近くにあったドミノを立て始める。
私もつられてドミノを立てる。





姫香
「先輩、一つ聞いてもいいですか?」


涼介
「なんだよ」


姫香
「なんで私をこの部活に勧誘したんですか?」


涼介
「あー…」





涼介先輩はドミノを立てる手を止めこちらを見た。
しばらくこちらをじっと見つめふっと笑う。





涼介
「教えねー」


姫香
「なんですかそれ!気になります…」


涼介
「いつか教えてやるよ」





へらへら笑う涼介先輩。
よくわからないが機嫌良さそうだ。





涼介
「お前さ、なんだかんだ部活いるよな」


姫香
「毎回手厚いお迎えが来ますからね」


涼介
「今でも部活辞めたいか?」


姫香
「そうですね、帰宅部になりたいです」


涼介
「そうか、楽しくないか…?」


姫香
「そういうわけじゃないですが…」






涼介先輩は寂しそうな顔をする。
そんな顔をされては困る。
楽しくないわけじゃない、むしろ楽しい。
でもめんどくさいのは事実だ。






姫香
「月に一回の活動ペースならなぁ」


涼介
「そんなことしたら月一でしかお前に会えねーじゃん」


姫香
「…?」






涼介先輩の言葉に少しドキッとした。
私に会いたいのかこの人は…。
思わず涼介先輩の顔を見るといつものへらへらした笑顔でドミノを見ていた。
…冗談か。





涼介
「お前、藍川のこと好きなんだってな」





―ガタッッッ





姫香
「なっっ、な、なんで…っ?!」





なんでこの人が知ってるんだ?!
私が真広先輩のこと好きだなんて言ったことがない。
突然の出来事に思わず立てていたドミノを倒してしまう。





涼介
「あー、お前せっかくここまで立ててきたドミノがー」


姫香
「そうじゃなくて、なんで…なんで、」


涼介
「…ただの勘で聞いたつもりだったんだけど」





涼介先輩は倒れたドミノを直しながら口を開く。





涼介
「その反応じゃ、当たりだったみたいだな」


姫香
「ッ///」





涼介先輩はクスッと笑いこちらを見る。






涼介
「あいつには女がいる、早く諦めるんだな」


姫香
「……」





そんなの、知ってる。
私が好きになっていい人じゃないことなんて知ってる。





涼介
「あいつよりもっと「わかってますよ!!!」…!」


姫香
「でも、……でも」





出来ないんだもん。





姫香
「好きに、なっちゃったんだもん…」


涼介
「…」


姫香
「諦めることが、出来ないんだもん…!」


涼介
「…泣くなよ。」






涼介先輩は近づき頭をぐりぐり撫でる。
私は涙が出ていたことに気づいた。






姫香
「……誰のせいですか」


涼介
「俺はあいつを想って泣くお前が嫌いだ」





ボソッとつぶやく涼介先輩。
涼介先輩は切なそうな顔をする。
その表情は初めて見る顔で思わず凝視してしまう。





姫香
「先輩は、私のこと好きなんですか…」


涼介
「自惚れんな馬鹿」


姫香
「ですよねー」





頭を撫でる先輩はへらっと笑う。
それにつられて私も笑う。





姫香
「やっぱり、真広先輩が好きです」


涼介
「あっそ」


(やっぱり私のこと好きでしょ)
(俺の理想は高いぞ)


(早く振られちまえよ)


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