奇襲の準備は出来てるよな?



 パチパチと火花が散り、乾いた石の上に落ちていく。
 その火を囲んで三人の少年少女が座っていた。お互いに顔を見合わせた後、一人の少女が口を開く。


「私は気づいたら広い丘に寝てて、近くで鉄砲の音がしたから怖くなって近くの森に入ったの。なんだか落ち着かなくて、ずっとうろうろしてた。そしたら風太が居たから一緒にここまで来た……」

「乃愛は……乃愛はね、ずっとここに居て、……何もしてなかったよ。怖くって」

「…俺がほっぽり出されたのはここから2kmくらいの森に囲まれた石畳のステージの上。そんで装備を確認しながら適当に歩いていたら朱璃に遭遇した。…それと道中、これが落ちてた」


 少年は腰のバッグから麻袋を取り出し、自分の前に置いた。隣の少女はそれを不思議そうに覗きこみ、中のものを一つ手に取った。


「携帯電話……だよね?」

「そう。乃愛、操作は出来るよな?」

「うん、ってこれ、通話以外の機能が無くなってるよ!」

 乃愛がいくらキーを押しても、携帯電話の液晶画面は電話帳以外の画面は映さない。風太は首をかきながら袋の中身を乱雑に出し、見てみろ、と二人を促した。


「何個ある?乃愛のもいれて」

「えっと、5個だね」


「そう。それでだな、俺はこの携帯電話は、俺達の為に用意されたものだと推測している。その仮定からすると、敵…相手側にも同じ通信機器が用意されてる……ってとこかな」

「すごーい!探偵さんみたーい!!」

「でもおかしくない?」


 風太に拍手をしようとした乃愛を、朱璃が声で遮る。彼女はそのままうつ伏せに寝転ぶと、朱色の炎ごしに二人に話し続けた。


「私達の為に用意されたのなら、携帯電話は6機あるはずだよ。さっきのあの青い部屋に居たのは6人。でもその袋に入っていたのは5機……」

 朱璃は肘にあごを乗せながら言葉を続ける。乃愛は携帯電話を弄るのを止め、そっと袋の中に戻した。


「私の推測はね、きっと味方の内の誰かが、一つだけ持って行っちゃったんだと思うな。私達以外の誰かが。……でもそんなことをする理由なんて分からないし、これも仮定の仮定にすぎない」


 朱璃が深く息を吸った瞬間、まるでタイミングをはかったかのように、洞穴内に無機質な電子音が鳴り響いた。乃愛と朱璃は肩をすくめながら、風太の手に持っている携帯電話を凝視した。

「……でるぞ」

 風太は素早く通話ボタンを押し、顔を強張らせながら耳にあてる。


「……誰だ…?」




『風太か。……お前、もう奇襲の準備は出来てるよな?』


 風太は一瞬相手が何を言っているのか理解できなかった。




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「いやぁ〜疲れましたなぁ〜」ザッザッ

「まだ10分しか歩いてないんだけど……」ザッザッ

「………」ザッザッ
「………」ザッザッ


「…なんかワクワクするよねっ」ザッザッ

「………飛鳥?」ザッザッ

「こういうの初めてだけどさ、あたしは結構楽しめる気がするよ」

「……は、何言ってんだよ。俺らこれから戦うんだz」

「あ!」ピタッ

「なんだよ」


「誰かいる!!ほら、向こうのあそこぉ!」ダッ

「おい、まてまてまて走るな!よく見ろ!!あいつさっき居た面子じゃないだろ!!」

「わかってるよ!敵でしょ、てーきっ!!」

「それなら早く逃g………ってあれ、きーくん……?………!!!」


「やめろ飛鳥!!斬っちゃ駄目だ!!!」


 右陰の叫びは、飛鳥の耳には入らなかった。飛鳥は村正を抜刀し、大きく体を跳躍させた。




by astrisk

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