守れなかった
柊
「ハァ…ハァ…」
駄目だ、息が…。
誰かに見つかるのも時間の問題なんだろうな…。
そうしたら戦う気力も逃げる体力もうない私はやられちゃうんだろうな。
柊
「あはは」
なんかもうどうでもいいや。
あの時よもぎを切った感覚。
身体が震えるような感覚。
あの感覚が、忘れられない。
―ザッザッ
足音がする。
良かな。
復讐しに来たのかな。
…それも
柊
「(面白い)」
刀を手にとり構える。
良
「見つけた」
柊
「見つかった」
―バァンッ
最初の一発は転がり交わす。
そのまま使えない右足を引きずりながら体制を整える。
柊
「あははははは」
良
「なにがおかしいんだよ!!!!!」
柊
「不思議だよ、痛くないんだよ!!!」
ううん、違うな。
痛いのか痛くないんだかわかんない。
神経が逝ったのかも。
息がくるしい。
柊
「ハァ…ハァ、」
どんどん追い詰められる。
立ち上がろうとするがどうもバランス取れない。
柊
「良、ゲームは楽しまないとね」
良
「…」
―バンッ
柊
「よもぎがいないのに楽しめるのカナ」
良
「うるせー」
―バァンッ
柊
「…あたしは楽しいよ、今も」
良
「嘘つくなよ」
―ガシャン
何を思ったのか良は銃を捨て、逃げ場のない私を抱き締めた。
柊
「あははははは、何してんの?」
良
「…」
―グサッ
良
「ッッ」
握っていた刀を良のお腹に掠める。
柊
「馬鹿じゃないの?死んじゃうよ?!」
良
「…ハァ…ハァ、楽しいって言ったよな…」
柊
「楽しいよ」
良
「じゃあ…」
良は私の刀を手に取り上に構える。
あぁ、死んじゃうのは私か。
良
「じゃあなんで泣いてんだよ…飛鳥……」
柊
「へ…?」
ほっぺを触ると確かに濡れていた。
気づかなかった。
柊
「あ、はは…おかしいな…なんでだろ、ははは」
良
「…ごめん」
良は握っていた刀を思いっきり振り下ろす。
―グチャッ
柊
「あっ…はは…ッやだな…今になって…ハァ」
良
「…」
柊
「痛みとか、あの時の感覚とか思い出してきた……」
ごめんねよもぎ、ごめんね…。
霞む視界の中、辛そうな顔をした良がずっと私を抱き締めていてくれた。
良
「…すぐ、終わらせるから……」
パン粉
「良くん…!!」
良
「パン粉…」
パン粉
「…ごめん、遅くなって…」
良
「俺…よもぎを、守れなかった……」
【柊 飛鳥 GAME OVER】
「仕事が早いなぁ良くんは」
ケラケラと笑う黒いフードの男。
「ほらよもぎ、飛鳥が来てくれるよ」
目の前にある真っ白な部屋でキョロキョロと辺りを見回すよもぎ。
こちらは見えていないよう。
そこに柊がスッと現れ横に倒れていた。
それに気づいたよもぎは柊に近づく。
「殺された相手、殺した相手」
クックッと笑いながら画面を見る。
「みーんな忘れちゃえば友達友達」
鼻歌混じりにモニター操作する男。
―ウィーン
そこに黒いフードをかぶった女がヒールを鳴らしながらはいってきた。
「こっちの準備できたよ」
「了解」
ガチャっとマイクのボタンを押す。
「準備ができました」
《いいよ》
「かしこまりました」
マイクを切り、新しいモニターを見つめる。
そこには二人の少女の姿。
「人数は多いほうが面白い」
「行ってらっしゃい、海月、クロート」
by 恋
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