引っ込み思案の自己紹介



ユノ
「マリーだ」


モモ
「へ?」





 白髪の少女ことマリーがドアから出てきた。
マリーもメカクシ団の一員。





キド
「やっと出てきたのか、おいマリー…」





 キドの声を聞きこちらに目を向ける。
が、モモの姿を見て慌てて部屋に戻っていった。





キド
「やっぱりか…」


カノ
「予想通りって感じ?わかりやすいな〜マリーは」


ユノ
「呼んでこようか?」


カノ
「だめ、ユノはここで自分の能力の練習してなさーい」


ユノ
「んー、ちょっと飽きたー」


カノ
「俺も見ててあげるから!」


ユノ
「…じゃ頑張る」





 カノに言われてしぶしぶテーブルに体を向ける。
カノはポケットからコインを取り出しそれをテーブルに置く。
それから黙ってニコニコ。
このコインを移動させればいいのか…。





モモ
「私嫌われてるようなんですが…」


キド
「あいつは誰にでもあぁだから気にするな、カノちょっと呼んで来てくれ」


カノ
「えぇ〜?やだよ下手してアレ喰らいたくないし」





 コインに集中しながらも会話を聞く。
アレとはマリーの能力のことだ。
マリーは目を合わせた奴を石にできる能力だ。
一番危険な子かなと私は思ってます。





キド
「あいつの機嫌が悪いこと自体お前のせいだろ」


ユノ
「あぁ、あの靴下のこと?カノゲラゲラ笑ってたよねー」


カノ
「いやいやだってすごい違和感だったでしょあれ?」





 前マリーの靴下がいつもと違っていた。
あのふんわりとした私服にルーズソックスを合わせて出てきたのだ。





カノ
「キドなんか逆に無反応決め込んでたじゃん」


キド
「お、俺は別に笑ったわけでも何か言ったわけでもないだろう!あそこは反応しないほうがよかったんだよ!!」


カノ
「いやいや、マリー靴下はいて出てきてから周りの反応超気にしてたって」


キド
「というかなんでユノは普通に褒めたんだよ!!」


ユノ
「だって可愛かったじゃん、ミスマッチに気づかないマリー」


キド
「ミスマッチと知りながらそれを褒めるのはどうかと思うぞ…」





 ?
何かおかしかったのかな?
呆れた顔のキドと現状を把握出来ていないモモちゃんを交互に見る。





カノ
「ていうかもう埒あかないからユノ、呼んできて」


ユノ
「えぇ、さっき練習してろって…」


カノ
「この中で誰が一番確実か、わかるよね?」


ユノ
「難しい質問だねー」


キド
「とにかく行ってきてくれ」


ユノ
「うん、わかった」





 マリーのいる部屋に向かう。
よし、開けるか。





―ガチャ





マリー
「あう!?」





 マリーの声と一緒に明らかに身体にドアをぶつけた音がした。
額を押さえ涙ぐんでいるマリーを見る。





ユノ
「わわ、ごめん大丈夫?」


マリー
「だ、いじょうぶ…あの人…?」

ユノ
「新入りさんだよ、アイドルの如月モモっていう子」


マリー
「アイドル…」


ユノ
「挨拶しに行こう?」


マリー
「む、無理だよー…」





 ドアにしがみつくマリーはとっても可愛い。
プルプルと震える髪も見ていて飽きない。





ユノ
「カノと違って優しい人だし!」


マリー
「無理…怖いもん…」





 チラッと後ろを向くとモモちゃんまで顔が青くなってきていた。
最初はこんなに否定されるのは結構傷つくもんなんだよね…。
見ての通りマリーはかなりの引っ込み思案だ。





ユノ
「大丈夫だよ!何かあったら私が守ってあげる!!」


マリー
「本当…?」





 「うん」と言ってあげるとマリーは私の手を握ってきた。
か、可愛いなぁもう!!
手を握り返すと少し微笑んで「大丈夫、大丈夫」とつぶやき出した。





ユノ
「つれて来たよ!」


カノ
「何で手つないでるの?」


ユノ
「可愛いから、カノもつなぐ?」


カノ
「後でね」





 いつになるか分からない約束をしつつマリーとモモの自己紹介が始まった。
手に力がこもっている。





モモ
「は、初めましてマリーさん!え、えっと、キサラギです!今日からしばらくこちらにお世話になることになりまして!あ、あの、頑張るのでよろしくお願いします!」





 慌てているモモ可愛いなぁ、こうしてみると普通の女の子だ。





マリー
「…」


モモ
「えぇと…あはは…そ、そんな感じで…」





 手の力が少し和らぐ。
おっ?





マリー
「わ、私…マリーです…は、はじめまして…」





 すっごくちっちゃい声だけど自己紹介できたみたいだ。
マリーと目が合い笑うとマリーも笑ってくれた。





マリー
「お、お茶入れてきます!!」


モモ
「あぁ、お、お構いなく!」





 面白い会話だなー…。
なんて思っていたらマリーとつないだ手の反対の手に何か触れた。
隣に座っていたカノの手が私の手の上にのっかっていたのだ。
何しているんだこの人は…。





 相変わらずの微笑みを浮かべるカノはまったく読めない。
マリーは大丈夫かな?





(ユノ、無反応はキツいよ)
(キド、カノが変)
(いつもだろ)
(ひどいなぁ)

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