―カランカラン





「いらっしゃいませー」


「あれ、新入りちゃん?やっと女の子入ったんだねー」


「は、はぁ…」





 バイト。
常連客どもがまるで女子を期待していたかのような扱いをしてくる。
正直だりー。





「秋ちゃん、隣おいでよー」


「そーゆーお店じゃないんで困ります」





 普通の喫茶店のくせに商店街のじじぃどもが群がってやがる。
このノリがだりー…。





「はっはっはっ人気者だなぁ秋ちゃん?」


「その名前嫌なんだが…」


「いい名前じゃん可愛くてー」





 店の主であるヤンキーみたいなおっさん(26)がヘラヘラしている。
そのグラサンをいつかかち割ってやる。
そしてさっきから呼ばれている"秋"とは、このおっさんがめんどくせーから店での名前をつけてきた。
ご丁寧に名札まで可愛くしてきやがった。





「秋ちゃーん注文いー?」


「だりーからやだ」


「いや行けw」





 背中を押されて注文をとりにいく。
アイスコーヒーくらい大声出して聞け。





―カランカラン





「いらっしゃい…って夢希か」


「こ、こんにちは///」





 メールでバイト先を教えてシフトまで教えてやった。
夢希の高校の友達であろう男の子を二人連れてきた。
うわぁ…なにこいつら、イケメン?
イケパラ?





「席あっちでいーか?」


「ど、どこでも!!!」





 なんで緊張してんだこいつ…?





「知り合い?かっけーじゃん」





 おっさん(店長)がニヤニヤしている。






「後輩だよ、中学ん時の」


「へぇ秋那くんよりもかっけーんじゃねwww?」





―パリーン





「ウワーオ皿落トシチャッター」


「ちょ、秋那くんヤメテwwww」





 ついやっちゃうんだ。





「すいませーんっ注文いいですかっ?」


「はいはい」





 夢希たちの席に向かう。
さっきの声はこのちっちゃい奴か。





「秋那さんって夢ちゃんの恋人?」


「ち、ちげーよ///」


「そうか、俺もう夢希と付き合えるのか」


「ちょ、先輩///?!」





 そうか、なんか新鮮だなぁ。
なんでだろう、唯太はいやだけど夢希ならいい気がする。





「ごめんねー、この子俺の彼女だからさぁ」





 後ろから気配を消して近づいてきたのは唯太だった。
確かまだ休憩の時間だった気がする。





「何言ってんだお前」


「秋那こそー浮気やだぁ!」





 キャッと笑うこいつの足を思いっきり踏んでやる。
夢希たちが焦ってる。





「ごめんごめん、秋那じゃなくって秋だったよね」


「そ っ ち じ ゃ ね ー よ」





 さらに足に力を込める。





「質問、いっすか」





 手をあげたのは夢希やちびっこではなかった。
綺麗な目だなぁおい。





「ホントに男だったんすか?」





 小さめの声だったので他の客には聞かれていないだろう。





「まぁ…男だ…った」


「へぇ…(…マジだったのか)」





 明らかに不信に思われている目だ。
チラッと夢希を見るが唯太を睨むのに夢中なようだ。
ちびっこはスマホを見ながらニヤニヤしている。





「秋ー、これ4番席に運んでー」


「おう」





 おっさんに呼ばれうまそうなハヤシライスを持ってほかの席に行く。
普通の女性客二人組だった。





「あそこの席の人たちかっこよくない?」


「あぁ入ってきた時から思った!」





 なんて声がする。
恐らく夢希たちのことだろう。
いいなぁ、俺もかっこいいとか言われてーよ…。
なんて妄想していたらおっさんが手招きしてきた。





「なぁ秋那、あの高校生をここで働かせたらイケメン喫茶じゃね?」


「そりゃ俺解雇ってことかな?」


「いや…お前あれだ、男装」


「男装かぁ…いいな」





 なんで男なのに男装してぇんだよ俺(泣)





(なぁ秋ちゃん、なんとか頼めないかなぁ?)
(くたばれじじぃ)
(まだ26だよ!!)



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