「はい、完成!」





 女もんの服を唯太に着せてもらい、全身鏡を見る。
女の俺は顔立ちがいい。
そりゃもう自分で見とれるほど。





「秋ちゃんに見とれちゃった?」


「い、いやだって、可愛くね?!」


「うん、可愛いよさすが俺のお嫁さ」





 腹にパンチしてすぐにドアを叩く音がなった。
広瀬がきた。





―ガチャ





「迎えにきたよー秋那ちゃん」


「ちゃん付けかよ…」


「おー、こりゃまた可愛くなったねー」





 まじまじとこちらを見てくるのでなんだか照れる。





「赤面した秋ちゃんも可愛いねーっ!」


「もう一回腹殴るか、唯太?」


「遠慮しまーす」





 こいつはお気楽すぎてムカつく。
こいつが女になったらそれはそれで楽しんでそうだしなぁ。





「秋?」


「うん、バイト先での秋那のあだ名!」


「ふーん」





 ニコニコしている二人を見上げながら靴を履く。
こいつら楽しんでるなー…。





「じゃいこっか、秋ちゃん」


「…おぉ」





 広瀬には敵わん。
チャリできたらしく、後ろに乗せてもらって移動。





「う、運転荒すぎる…」


「はは、だから抱きしめていいって言ったのに」


「やだ」





 男同士でやってられっか!!
なんていうくだらないプライドから死にそうになるくらい揺らされた。





「ありゃわざとか…」


「やってくれないんだもん」


「…悪魔」


「ほらほら彼氏になんてものいいですかー」


「ッチ」





 何が彼氏だ。
こんな腹黒と付き合いたくねーよ。





「じゃ、家では彼女らしくね」


「おう」


「"うん"でしょ?」


「う、うん」





 やばい、手なずけられる…!!
そういえば、急に家行って大丈夫だったのか?
男ならよかっただろうけど。





―ガチャ





「ただいまー」


「お、お邪魔します」





 急に緊張してきた。
靴を綺麗に脱ぎ、出されたスリッパに履き替え広瀬の後ろについてく。





「そんな緊張しなくていいよ?」


「わかってるんだけど…」





 リビングに案内される。
既に下の双子であろう男女二人が座っていた。





「おかえり夏那」


「おっかえりー!」





 最初に先に反応したのは妹さんのほうだった。
次に元気に走ってきたのが弟だった。
なんて話していたら妹さんと目があった。





「…」


「…」





 き、気まずい。





「…夏那、誰」


「彼女だよー」





 うわ、妹さんこっち睨んでるよ!!





「ひ、広瀬…俺、じゃない私気まずい…」






 広瀬の服を引っ張りながら俺の心境を伝える。
広瀬は振り返り頭を撫でてきた。





「大丈夫だよ、可愛いよ」


「いやそういう確認じゃねーよ」





―グイ





 手を引っ張られた。
妹さんだった。





「え、えーと?」


「貴女、夏那とちゅーしたの?」


「え、えぇ?!」





 妹さんは上目遣いで真剣に聞いてくる。
イケメンの妹は綺麗だな…。
じゃなくて、ちゅー?!
広瀬に助けを求める。





「したよ」





 広瀬えええええええええ!!!!!





「お、お前なにを///!!!??」


「か、夏那、えっちも…?!」





 妹さんまで何を言ってるんだあああああああ///!!





「それはまだかな、これから」


「広瀬…後で殴る」


「あはは」





 エプロンに着替えた夏那は「ゆっくりしてて」と言って追い出された。
残った俺と妹さんと弟くん。





「お姉さん名前は?」


「えっと、秋…です」


「秋さん可愛いですねー!」

「そ、そんなこと…」





 弟くんぐいぐいくる…!!!
そして妹さん目怖い。





「あ、俺は広瀬悠姫!あっちが雛乃」


「よ、よろしくー…」





 雛乃さん、マジで怖いから!!!
うわぁ…。





「…悠姫、ちょっと」





 ちょいちょいと手招きをして悠姫と二人で奥の部屋に消えていった。
つ、疲れたぁ。
机に突っ伏してため息をつく。





「お疲れ、大丈夫?」


「広瀬ー…」





 広瀬の足にしがみつき頭を撫でられる。
なんであんなに怖いんだよ広瀬妹!!!





「雛乃人見知り激しいんだよ」


「ありゃ俺を殺す目だったよ」


「ホントは素直でいい子なんだけどな」





 てか妹さんは広瀬のこと好きすぎだろ…。





「御兄さんは?」


「まだ学校じゃないかな」


「大学生か」


「うん、雛乃たちは今年受験生」


「へー」





 男子校だから妹さんがついてくることはないだろう。
ちょっと安心。
つか中3でえっちとか言うなよ…。





「広瀬」


「ん?」


「髪にゴミついてる」


「どこ?」





 ぐずぐずしているので俺が取ってやる。





「…秋那、抱きしめていい?」


「だめだ」





―ギュッ





 俺の声が伝わらなかったのか抱きしめられた。





「ほっせぇ…」


「抱くな」


「腰まわりとか特に」


「まさぐるな」


「エロい服好き?」


「俺の趣味じゃない」


「キスしていい?」


「残念だが男に興味はない」


「でも今は女の子だよ」

「わかった、わかったから尻を触るな」





 なんだこいつは…。





「本当の彼女になんない?」


「あー、悪いけど弟くんと妹さんなんとかしようか」





 気付けばすぐ近くに二人がいた。
悠姫くんはニコニコしていて雛乃さんは俺を殺すような目で見ている。





「雛乃、悠姫、続きしていいか?」


「駄目」


「是非!!!」





 ノリノリだな弟くん。





「いいって」


「お前妹さんの話聞いてたか?!」





 なんとか離れて席につく。
久々のハンバーグだが妹さんの目怖い…。





「ひ、雛乃ちゃん…?」


「…な」


「え…?」


「調子に乗るな」





 俺は忘れない。
この子がこんな顔するなんて…。
しかも中指を突き立てて。





(広瀬、ハンバーグタッパに詰めて持って帰っていいか?)
(いいけど、もう帰るの?)
(殺されそうだからな)
(?)



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