※あまり綺麗な表現じゃないです。一応ワンクッション。


















病的なまでに白く、細い首は、ぱきりと折ってしまいそうだし、水で濡らした紙みたいに突いたら破れてぼろぼろになりそうな肌が、雪にさらしたのかと云うほど透き通って、青い血管を透かしていた。今体を二つに折って震えているのが、(ある人の言葉を借りると)ハイソルジャーと云われていたものなどとは、とてもじゃないけど信じられない。ごぷりと吐き出して噎こんで、また吐いてを繰り返す小さな背中を見ていた。暫くして正しく蚊の鳴くような、鹿の泣くような、そんな声に惹かれて言葉を吐いた。
「何、してる」
「南雲くんこそどうしたの」
「その名前で呼ぶな」
ぎらぎらと光る目はいつものように鋭くない。眼球に張った涙の膜が零れそうで零れない。笑いだしてしまいそうな私を外に口を突いた言葉が更にその顔を歪めた。
「何で?南雲くんは南雲くんでしかないのよ?あ、もしかしてバーンって呼んでほしいの?あの人にもらった名前を?私はあんな自己満足の子供じみた遊びに興味はなかったの、これっぽっちもね、そんな飯事をまだ引き摺るなんて弱いわね、彼の言葉を真似るわけではないけど、脆弱だわ、本当に病院で寝たきりだったのは、幼なじみの彼じゃなくて、南雲くんの方なんじゃないの、なんて失言だったかしら?彼は強いものね、いろんな意味で、それで、どうしたの?その酷い顔は」
今の彼にとっては暴言オンパレード。言い返そうとしてせり上がったものは私ではなくて、トイレに向けられた。可哀相に、可愛そうに、生理的なものだとはいえ、表面張力に耐えかねた水は、南雲くんのユニフォームに濃い染みを作った。
「手前ぇには、関係ないだろうが」
「捨てられた?」
「っ、うるせぇ!…ゴホッ」
逆流する唾液に堪えかねて、私に反論を返す前にその場にへたり込んでしまった。最近はこんな事が頻繁にあった。白い肌にうっすら隈が浮かんでいた。そろそろ体力的にも気力的にも限界が来ていたはずだ。南雲君はいつ倒れても可笑しくない状態であったけど、それを私の前でしてしまったことを酷く悔やんでいるようだった。憎々しげに私を見上げて、ぼろぼろと涙をこぼしながら言った。
「お前なんかに何が分かるんだ…」
「………」
私は南雲君と同じ目線にあわせて、少し乱暴に首に手を回した。思っていたよりも体が冷たくて、今なら殺してしまえるのではないかと思った。ひょっとしたら間違ってしまいそうになるくらいに、南雲君の体は細くて、まるでぴんと張りっぱなしにされて切れかけになった糸のようだと思った。
「南雲くん、ばかだよ」
「うるさい」
「ほんとに」
しばらくの間そうしていると、だらりと床に垂れたままの腕が、そうっと持ち上がって私の背中に乗せられた。もう涙は止まっていたけれど、彼は泣いているように見えた。



甘やかした白い腕



結局彼は嫌々ながらも私の手を取ったのだ。

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