ある日突然、どういうわけか円堂を目で追い掛けるようになった。別にそう意味ではなく、何となくだ。俺はそんな趣味があるわけではないし、もし目が合ったら普通に会話するし、話したいことがない限り、目が合わなければそのまま素通り。素っ気ない気がするかもしれないけれど、至って普通の友達だ。円堂はよく今日の部活はどうする?とか何部の誰だれが体育の時間にすごいシュートを打った、是非とも一緒にサッカーをしたいとかそんなことを話す。それに俺も相づちを打ちながら応える。その時の彼はきらきら眩しい笑顔をもって、最後にお決まりの台詞でこう締める。


「よし、サッカーしようぜ!」
「まだ掃除時間だぜ?ほら、円堂ちりとり」
「えー…早く部活の時間にならないかなー」
「手はきちんと動かせよな」
「半田はサッカーしたくないのか?」
「いやしたいけど掃除しなかったら居残りだろ?そっちのが嫌じゃんか」
「ちぇ、半田らしいのな」


冷たいなぁ、なんて言いながらも手を動かし始めた円堂を見て、自分も渋々作業を続ける。掃く、掃く、塵取り、掃く、……以下エンドレスである。


「あ、そういえばな」
「ん、なんだ?」
「なまえが半田を見たって言ってたぜ」
「え?」


なまえというのは円堂の妹で、顔は良く似ているのに性格はさっぱりしていて、似ていない。こういう物言いをすると円堂の熱血遺伝子はどこから来たのだろうと思う。あ、隔世遺伝か。とどうでもいいことを考えて聞き返した。


「それで?」
「いや、それだけ。あ、あと伝えてほしいっていってたな、確か…あぁ、思い出した。貴方みたいな変な人は初めて会いました、だってさ」
「変な人かよ」
「普通だと思うけどな、俺はな」


はははっ、と軽く笑い会って、喧嘩売ってんの?と呟いたら、いつもみたいな笑顔で怒るなって、と躱された。食えない奴だと心なかで舌を出したらチャイムが鳴った。掃除時間が終わる五分前の予鈴だ。話には加わってこなかったけど、同じ掃除場所の奴らは、さっさと掃除道具まで片付けて我先にと帰ってしまっていた。本当だったらその先に帰ってしまった奴らがゴミ捨て当番だった筈のゴミ箱が、静かに鎮座なさっていた。円堂と俺は一瞬視線を交わして拳と拳の勝負、つまりはジャンケンをしたわけだ。


「久しぶり」
「一昨日ぶりですよ、半田先輩」
「そりゃ悪かったな円堂後輩」
「会いたかったですよ」
「こちらこそ」


ゴミ捨て場には殆ど人気がなかった。古株さんでさえ他に用事があるのか見当たらなくて、そこにはゴミ箱を持った俺と、円堂なまえの姿があっただけだった。傍目からは仲のいい先輩後輩に見えただろうか?実際は乾燥機にかけたかのようにドライな応酬なのだけど。


「半田先輩、いつでしたっけ?いきなりセクハラ擬いの事をしてきたのは」
「俺には全く身に覚えがないな」
「共食いに興味がお有りなら他の人に頼んでください。あの後私は指の先が痺れて上手く字が書けなかったんですよ」
「それは悪かったな。だけどまぁ、甘かったとだけ言っておくよ」
「変な人です」
「お前程じゃないさ」
「そうですか、それじゃああなたが嫌いです」
「俺も嫌いさ、とりあえず先に聞いとくけど、お前の兄さんシスコンだろ」
「えぇ、妹の恋を邪魔するくらいには」
「滅茶苦茶重度じゃないか」


そういって彼女の手に歯形を残した。がりっと音がしたとき、変態と罵られたような気がしたけど、彼女も何もしなかった。因みにさっきのジャンケンの結果は俺の勝ちだった。






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嫌い嫌い言ってる関係は可愛いなと思います

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