最高気温は摂氏32度、地球温暖化を語るのに不足無い高気温だ。
アスファルトでがっちり舗装された道路に氷を落とせば、一瞬で水蒸気へと状態変化を遂げてしまいそうだ。そんな所を素知らぬ顔で轟々とエンジンを唸らせて走り抜けていく自動車のタイヤは、相当の耐久性があるんじゃないか、と一人思考を巡らす。
別にこんな事を考える義務もあったもんじゃないけど。


「…日焼けとか気にしないのか?」
「焼けすぎない程度には日焼け止め塗ってるから平気。だって暑いじゃない」
「いや、それは激しく同意するけどさ。それは薄着過ぎない?」
「こんなの普通だって。半田は考え方まで中途半端に古いのね」
「中途半端って言うな」


彼女の格好はこの暑さに対抗してか、オフショルダーのワンピースにきらきらと青いミュール。成程、夏らしくて大変よろしい。
遠回しな俺の叫びは届かないのか、きらきらミュールと同じような笑顔でからかってくる。
あぁ、仕方がない。率直に言おう。頼むから上に何か羽織るなり露出を減らしてください。目の行き場がなくて困ってます。目の毒というか何というか…あ、悪い意味ではないからな。とにかく気まずいんです。一応俺も男なわけで、そう無防備でいられると、ね?

注意、これはすべて心のなかです。口に出せない鶏ハートな俺を許してください。


「どうしたの?急に黙りこくっちゃって」
「うん、何でもないさ」
「ふぅん…あ、あのカフェ入っていい?あそこのアーモンドカフェラテとっても美味しいの」
「へぇ、じゃあ行こうか」


あぁ、また言うタイミングを逃してしまった。彼女が差すのは今いる場所から道路を挟んだ反対側にある、控え目なイメージのフレンチカフェだ。横断歩道は近くにあって、信号機は青だったのですぐに着いた。



「えーと、メニューは…うん、やっぱりこれよね。半田はどうする?」
「あー、アイスコーヒーでいいや」
「普通だねー、ま、いいや」

すみませーん、と店員を呼び付けて手際よく注文をしていく彼女、やっぱり彼女はお気に入りのアーモンドカフェラテらしい。常連なのか店員ともやけに親しげだ。…うん、店員が女の人でよかった。
俺はというと彼女の肩やら足やらに目が行ってしまって、それも無意識のうちに。溜め息しか出ない。


「半田さーん、何溜め息ついてるんですか?」
「うん、いや、そのだな」
「ん?何々?っと、注文したの来たね」


店員がグラスを二つ俺たちの間に並べて、彼女に何か耳打ちをしてにっこり笑って、戻っていった。何を言ったのかはよく分からなかったけど、彼女は何やら満足気に、そして勝ち気な笑みを俺に向けた。からんからん、ミルクを一つ自分のグラスに落としてからストローで掻き混ぜた。


「あのさ、俺としてはあんまり肌が出るのは着てほしくない、んだけど…」

意を決して、あまり悪く聞こえないように気をつけて口に出した言葉は、何だか頼りなかった。しかし彼女の反応はにこりとさっきと同じような笑みを見せただけだった。


「何だそういう事なら早く言えばよかったのに」
「え?」
「つまりさ、こういう事でしょ?」



裸足も剥き出しの肩も好き、なんでしょ




(さっき店員さんが彼氏さんがあんまり肌見せてるもんだから、目のやり場に困ってるよ、って)
(う、はた目から見てもバレバレだったってこと?)
(まぁあたしはそんな半田の反応が楽しかったんだけどね)
(確信犯!?)





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温かい夏が恋しいよー

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