｢さくまー｣
｢…何だよ｣
｢さくままままま｣
｢それどっかで聞いたことあるぞ｣
｢そんなことより、はい｣
｢話し振ったのおまえだろ……って、これ｣
なんとなしに受け取った角箱は某社が販売しているフルーツドロップスだった。そしてそれを(ほぼ強制的に)渡してにこにこと笑うなまえ。なんというかどこに突っ込んでいいか分からない。
｢それコンビニで見つけて即買いしちゃったよー｣
｢どういうチョイスだよ｣
｢え、名前繋がり。｣
｢オレに対する嫌がらせか、というかお前これ開封済じゃん｣
｢うんうまいよねー…んぐ｣
あれ、これ(一応)オレにくれたんだよな。確認することでもないが一度もらったものを断りなく目の前で食べられたんじゃ、何だか肩透かしを食らったみたいでいい気持ちはしない。
｢おーい佐久間、トリップすなー｣
｢あ、悪い｣
｢もー佐久間ったら、そんなに熱い視線を注いじゃってー｣
｢は？｣
気の抜けた返事。熱い視線ってこのドロップスの缶に？……いまいちなまえの物のとらえ方がよく分からない。確かに多少恨めしい視線を浴びせて居たかもしれないけれど、その色恋を思わせる言い方はやめていただきたい。クラスにいる奴らから指差されてる気がするんだが…
｢んんー｣
｢今度はどうしたんだ？｣
｢あ、いいこと思いついた｣
｢は？｣
いきなり唸りだしたなまえに本日二度目の気の抜けた返事。いや、さすがのオレでもこんな状況に対応するスキルは持ってない。と言うよりこれに対するスキルを手に入れるには相当なレベルを要すると思うんだが、なあなまえ
｢ぷはっ｣
｢………｣
｢あり？どうしたよ佐久間｣
｢……お前女じゃねー｣
｢誉め言葉だね｣
口のなかに残った甘ったるい香りと熱、こんな形で失ってしまうなんてとか言うほど女々しくないけど、いや、なんか呆気なかった。もう少しファーストキスは記憶に残るもんだと思ってたけど、今でさえあまりに急な出来事であやふやなのに
｢飴食べたかったんじゃないの？｣
｢食べたかったら勝手に食べるさ｣
｢ふーん、まいいや、佐久間の初めてげっとー｣
意地が悪そうな顔をしたなまえに浮かぶわずかな赤が現実だと思い知らせる。
｢ど？おいし？｣
｢苺味だった｣
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女の子に攻められる佐久間も
なんかいい
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