融けたアイスがベタベタ指の間を流れ落ちて、そのまま地面へと零れた。あーあ、勿体ない。それを舐めとってあげたら何とも言えない顔を俺に向けた。コケティッシュな雰囲気なんか微塵も漂わない、けど、アイスと一緒に融けゆく君を見てみたいとは思った。かんかんと照りつける太陽、焼かれて今にも飛び跳ねそうな地面、そして融けてなくなる途中の君。あはは、何とかしてくれゴッド、俺の頭んなかは夏という割り切れない熱にとかされてしまった、らしい、口の中でバニラが暴れる。あ、俺はチョコ派何だっけ?どうでもいい。



閑話休題。



「のけて」
なまえの声はいまいち記憶に残らない、と誰かがいっていた気がする。確かに今さっきも聞いたはずなのにもう頭の隅に追いやられて、思い出せない。影野以上の影の薄さ!(あぁ失礼)しかしまぁ彼女の場合は声だけで、見てる分にはちゃんといるのがわかる。「何か不都合でも?」返す言葉に、とぼけんなとでもいいたそうな目。いや、ほんとにいっていたとしてもきづかなかっただけなのかもしれない。ゆうれいみたいできみわるいよ、あははは。

「手を離して」
「やだ」
「、何でこんなこと」
「楽しいからさ」

つきたてる、喉の奥にまでは入れてないけど、指の先に温い唾液が絡まるのがわかって、少しだけ、心臓がゆれた。そこで初めてではない沈黙が俺となまえの上に三点四つ並べて浮いているはずだ。上にのっているからとかそんなのお構いなしに抵抗するなまえは、欲情の対象として見るには綺麗すぎた。だから、そのきれいな顔を崩して、心を揺さぶって、なかせて、懇願させて、俺が感じているこの感情を快楽で覆してやろうと思ったのに、


「なんだつまんねー」


襲ってきたのは自分への嫌悪感と、彼女の涙を拭ってやりたいというくだらない願望。彼女の口の中に残ったままの指を更に奥に突っ込んだらえずくような悲鳴が聞こえて、それも今すぐにでも忘れてしまいそうだったから、もう片方の開いている手で頬を打った。手のひらが熱を持ってじんじんと痺れたけれど、それにすらただ、うれしくて、ゆるむ口元を押さえられなかった。


「けほ、なんで」
「は、はは、まだわかんないかなぁ?」


融かされたのは俺で、この熱い日差しを避ける術は持ってなかった。君自身が太陽だって思ったんだけどね、なら一緒に太陽も融かしてみよう、なんて無謀なことチャレンジするにはまだ時間が足りなかったからさ、まずは、そうだね


「君が好きだってことさ」



単純明快、ゆえにふくざつかいき。
そっとぶった手で顔を包み込んで覗き見たなまえの顔は、泣きながら笑ってて、嫌悪を顕にした、それでいて清々しい顔をしてた。








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愛情表現の方法も
色々あるんだよ


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