三ヶ月記念日、彼氏に振られた。ムカついた。蹴った。泣きながらに責めた。序でに暴言吐き捨てた。


「ちくしょー、罵倒の言葉が身に染みる」
「まぁ、伊達に三ヶ月付き合ってたわけじゃないって事だろ」
「だってぇー人の欠点をあそこまで言い散らすことないじゃんかぁ!」
「流石に料理をすると爆発するとか、ミシンでプラスチックを縫おうとしたとかは驚いたな」
「あぁぁあ!言うな!ちくしょーファックファック!地獄に堕ちろ!」
「それ英語圏じゃ相当ひどい侮辱らしいぞ」


泣きながら廊下の隅で蹲っているあたしを発見したのは風丸だった。何だかよくわからないけど事の一部始終を見ていたらしく、親切心から人目のつかない階段までつれてきてくれたのだ。

「はぁ、普通腹癒せとかで今まで付き合ってた奴にあんな事言うか?」
「だって本当のことだもん」
「泣いてる理由は?」
「怒り心頭、ムカついたら涙が出る質なんです」


在ろう事か元・彼氏はあたしに別れを告げる際これでもかっと言うほどあたしの駄目なところを吐き捨てていったのだ。それも廊下で大声で。それも仕方ないかもしれない。突然に「お前最近冷たくないか」そんなふうに言われて、少しだけ機嫌の悪かったあたしはついぽろっと本音が出てしまったのだ。「別にそんなに好きでもない奴に優しくできるほどあたしの心は広くないよ」と、それを聞いた元彼は顔を真っ赤にしてあたしがまぁ、女としてダメなところを突き付けてきたわけだから、言い返したらその三倍くらいの言葉が返ってきて、最終的には口喧嘩。「お前と付き合ってたら本当に疲れるわ」捨て台詞と共に相手が背を向けて歩きだしたところに背後からドロップキックをお見舞いして、「あんたなんか道路の溝にはまって縁のところで脛ぶつけて痛がってればいいのに!」と叫んで逃げてきた。最後の一言はスケールが小さいようでなかなかダメージは大きいのだ。せいぜい身悶えてやがれっ!


「じゃああいつのことは全然好きじゃなくて付き合ってたのか?」
「別に嫌いじゃなかったけどね、でも……流石に一緒にいると疲れるは効いたかも」

うわー何だろ時間差攻撃?急に悲しくなってきたよ。最後はあれでも一応仲良かった時期あったもんな、でも今日であいつともお別れか、話すこととかなくなるんだろうな…


「はぁ…おまえら二人揃ってバカだよなぁ」
「ぅ、バカとは何よー別にもう吹っ切れたわよ。涙とともに一抹の迷いも流したもん」

これは嘘じゃないけど、そんなに大きな溜め息をつかれちゃこっちだって参るのよ。何さ言いたいことがあるならさっさといいなさいよ。そんな意味も含めて睨み付けたら直ぐ傍でさらりと揺れた空色を目の端でとらえた。つまりは抱き締められているわけで


「へっ?えぇっ!ちょっ」
「あいつにお前のことを振ってくれてありがとうって言っておこうかな」


くすりと笑った声がいつもよりも低くくぐもって、あたしの鼓膜を揺らした。前から抱き締められてる形だから顔は見えないけど、それでよかった気がする。普段の風丸が絶対に浮かべないような意地悪な笑みを想像してしまって、かぁーっと顔に熱が集まるのがわかった。


「そう易々と手放すならオレが攫ってやろうかと思ってるんだけどこの提案どう?」


あぁ、これは心臓の音が聞こえてしまってるんじゃないか。ってくらいにあたしの心臓はびっくりしてる。この手を取っていいのか、一時の傷心からまた同じ事を繰り返してしまわないのか、頭のなかはぐるぐる渦巻いてた。

「…慰めてくれるなら精一杯甘やかしてよね」
「了解」


あたしの皮膚は優しさしか受け入れません


差し伸べられた手をためらいなく取ったのは、きっと今度はうまくいく、ぐるぐるした頭のどこかで確信に似た何かを見つけてしまったのかもしれない。



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