「…さて、この状況が理解できているかい?」
「いや、全然」

四肢を十字架に縫い止められて拘束されながら、遊馬はトロンの問い掛けにきょとんとした顔で答えた。ステンドグラスから差し込む目にいたいほどに澱んだ光は、骨が浮かんだ細い四肢を照らし出している。普段の断罪であれば、ただの夢であってほしいと願うほどの拷問を与えるのだが。

「っ、待ってください!!」

Vがトロンにすがりついたことで、辛うじてそれは免れた。悪戯を咎められた幼い子供のように目を瞬かせながらトロンが振り向き、遊馬が不思議そうに首を傾げる。突然声を荒げたVに兄二人が目を見開いて驚愕したが、Vはそれを気にもとめない。

「どうしたんだい、V?」

慌てを通り越し半ば泣き顔の息子にしどろもどろしながら、トロンはそう問い掛けた。気を高ぶらせるあまり顔を赤くし咽せながら、Vが口を開こうとした、瞬間。

「その判決待ったぁぁぁ!!」

そんな絶叫が響いたかと思うと、ぱりーん、と盛大に音を立ててステンドグラスを割りながら、漸く暗黒界に到着した凌牙が転がり込んできた。ひどく息切れしながら手紙を差し出してくる凌牙に唖然としつつ、最も近くにいたXが手紙を受け取る。乾いた音を立てながら開かれた手紙に目を通した瞬間、Xの表情がひくりと引きつった。

「どういう…ことだ…?」

そんな問い掛けが、妙に静かな空間に響き渡る。力を込めるあまりに、びりっ、と紙の破ける音がした。



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