再び状況は一触即発、目つきがいいとは言い難い二人が睨み合う剣呑とした空気の中で、憐れ少年はおずおずと口を開く。

「W、一先ず落ち着いてくれ」

Wと呼ばれた乱入者は遊馬がかけた制止の言葉にひとつ頷くと先程の鋭い表情はどこへやら、穏やかかつ紳士的青年といった優男風の笑顔を湛えて遊馬の隣に腰掛けた。その変わり身の早さと激しさに、凌牙は不愉快だとばかりに思い切り眉を寄せる。目の前の乱入者、Wが小さく舌打ちをしたのは恐らく空耳や聞き間違いではないだろう。はぁー、と半ば蚊帳の外だった遊馬が間延びした溜息を吐いた。

「…こいつもアンドロイドでさ、型番とか製造元はVと一緒なんだ」

成る程、道理で声のドスの利かせ方やら第一声やら妙な所が似通っているわけだ。ここまでくると製造元に何らかの問題があるようにも思えてくるが、トロン社は業界でも大手中の大手、恐らく問題は無いと思われる。しかし万が一というのも無いとは言い切れない、こいつもしやポンコツ掴まされたんじゃなかろうかと勘ぐりつつ凌牙は遊馬の言葉に耳を傾けた。

「一応特級アンドロイドらしいんだけど…その、性格に難ありってことで、安めの価格設定だったから」

どうやら店舗側もこのアンドロイドの性格の悪さはしっかりと把握していたようだ、それならば一般家庭がブランド物とも言える社のアンドロイドを複数購入できても不思議ではない。今までに性格故の値下げなど聞いた事が無かったが、価格設定基準というのは分からないものだ。

「で、二体同時購入っていうわけか」
「いや、実は二体じゃなくって、」

漸く状況を理解しかけたところで、遊馬の発言は無理矢理に形容するならば寝耳に水といった具合だった。は、と呆けたように口を開けたまま凌牙が硬直してしまったその矢先である。二度ある事は三度ある、ごにょごにょと言葉を濁しつつ先を伝えようとした遊馬の言葉を遮るようにして、本日三人目の乱入者が登場した。

「貴様、何者だ」
「三回目になるけど改めて言うぜ、お前が誰だよ」



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