まさしく状況は一触即発、ばちばちと火花を散らす二人を静観していた遊馬であったが、剣呑な空気を察してか半開きになっていた口から漸く言葉を吐きだした。

「V、その人は俺の先輩だから…」

穏やかな口調でそう諭した遊馬の瞳を暫く見つめてから、Vと呼ばれた少年はぷぅ、と頬を膨らませつつ凌牙から視線を外した、その表情はまさしく不服のそれだったが。なんだこいつ、と凌牙が怪訝かつ鋭利な目つきでVを眺めて、否、睨み付けていた矢先、困り顔の遊馬がやはり困ったような声音でしゃべり出す。

「えーっと…こいつが、俺ん家で購入したアンドロイドのV。最新型らしいんだけど、さぁ…」
「そう、僕は最新型アンドロイドさ!!」

そんな遊馬の説明をぶった切るかのような勢いでVはそう口にした、遊馬に抱きつく有様はそのままに。効果音を付けるならば、むぎゅっ、といった具合に抱きつきながら、Vはぺらぺらと饒舌に喋ること喋ること。

「人工知能は技術において最高峰と謳われるTR-X型、機械的工場における量産ではなく一人一人がハンドメイドで有名なトロン社製の機体の完成度は他の企業と比較しても頭一つ飛び抜けていると自負して、」
「はいそこまで」

ぱん、と遊馬が手を打ち鳴らしたことでその場は終息した、このまま解説を続けられたら日が暮れてしまうこと必至だろう。Vの勢いに半ば気圧されていた凌牙はようやく我に返って遊馬に声をかける。

「こいつだけか?」

その問いに遊馬は困ったように笑い、Vの癖っ毛頭を撫でながら返事を返そうとした、が。またもや突然の乱入者により、それは阻まれてしまうこととなる。その乱入者は遊馬にしがみつくVの頭をひっぱたき、文句言いたげなVを黙殺してVと同じく凌牙をぎろりと睨み付けた。右目にかかるようにして入った傷痕が尚更その表情の威圧感を増している。乱入者はドスの利いた、不良も竦み上がるような声音で吐き捨てるように言い放った。

「誰だてめぇ」
「いやお前が誰、…おい待て、このやりとり二回目じゃねぇか?」



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