「お前ん家もアンドロイド導入したのか」

へえ、と少々驚き気味な声を零しながら、九十九家を訪れていた神代凌牙はそう言った。時は超情報化社会、世界情勢は大きく変化し、何より時代の発展に伴って科学技術は劇的な進化を遂げた。そしてその最たる例が、件のアンドロイドというやつである。近代技術を最大限活用して発明された人工知能と人工筋肉を有している、第二の人類と呼んでも過言ではない存在、それがアンドロイドだ。一般向けにも多く市販されており、人型に限らず愛玩動物型やそれこそロボットのような形のものまで様々である、用途は購入者によるのだが。

「うん、そろそろ時代の流れに乗りたいかなー、って」
「そんな理由でアンドロイド買う奴聞いた事ねぇよ…」

紅茶の注がれたカップを片手に凌牙の正面に座っていた遊馬はにっこりと笑みを浮かべながらそう返した、購入理由は周囲からすればそれこそ不可解の一言に尽きる。だが、家族全員恐ろしいほどマイペースな九十九一家の事だ、そんな理由で購入しても不思議ではない。

「で、何体購入したんだ?」

お茶請けのクッキーに手を伸ばしながら、軽い調子で凌牙は問う。九十九家は経済的には豊かと言える、アンドロイドの低価格化も進んでいるのだ、何体購入したかぐらい訊いても問題ないだろう。そう思いつつ返事を待つ凌牙と、返事を返そうと口を開きかけた遊馬の間に突如、ひとつの影が割り込んだ。

「遊馬!」

影は遊馬の名前を呼んで数瞬置かずに遊馬へと飛びつく。くるりとウェーブした深緋の髪と若竹の瞳が印象的な、一見すれば少女に見えるような少年、それが影の正体だった。甘えん坊な子供のように遊馬に擦り寄りながら、少年はぎろりと凌牙を睨み付け先程の朗らかな声音はどこへやら、ドスの利いた声で低く低く問いかける。

「…きみ、遊馬のなに?」
「いや、お前が誰だよ」



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