にこ、と幼い笑みを仮面の下に湛えながら、トロンは遊馬の手を引いて歩いていく。そしてその後を、X、W、Vが付き従うように追っていた。幼子のように柔らかな手に掴まれた手首は、あたかも糸のように細い数多の蛇が絡み付いているような錯覚を与える。ずるずると蠢く感触に眉を寄せながら、遊馬は案内されるがままについて行った。小さな足が踏みしめた大地は次々に異形のモノを生み出していく。それらが遊馬の足を掴もうとするものだから、すぐ後ろをついて行くXがそれをはたき落としていた。

「どうして、俺の名前を?」

「ハデスの奴から君の話を聞いてね」

やはり子供のように笑いながら、トロンは歩を進めていく。その笑い声に呼応するようにして数を増やしていく異形を見やりながら、遊馬は引かれるがままについて行った。



天界、冥界、そして暗黒界を繋ぐ連絡役を担う凌牙は、天界から送りつけられたら通達の内容に目を通した瞬間、気をあらぶらせるあまり手に持った手紙をあやうく泡にしてしまうところだった。怒りも露わになった幼い文字は、書記長がとんだ筆記ミスをしてしまったということを事細かに記している。

「あのイチゴ頭…こっちの仕事増やしやがって!!」

恐らくこの通達を取り急ぎ書いたのだろう書記長補佐のハルトの怒りがひしひしと伝わってくる。まさしく凌牙も似たような面持ちで、海龍の翼を羽ばたかせながら暗黒界への道を急いでいた。天界側の手違いで無罪の死者が大罪人扱いなんてことになってしまったら目も当てられない。姿も知らぬ被害者を哀れに思いながら、凌牙は速度を上げ、暗雲の中へと突っ込んでいった。



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