「こんな綺麗な瞳をした子が咎人だなんてありえませんよね!!」

ぱぁっ、と輝かしいほどの笑顔でそう言い切ったVを見つめて、少年は首を傾げた。如何にも納得いかないといった、そんな表情。Xの長い髪を半ば三つ編みのようにして遊んでいた少年は、桜色の唇を緩やかに開いて口を利いた。

「俺、ハデスに親殺しだって言われたんだけど」

瞬間、少年を除く三人の動きが止まった。親殺しは全ての罪のなかでも重罪に位置するほどの大罪である。こんなあどけなく純朴そうな少年がそんな大罪を犯したなど、俄には信じがたい話だった。誰よりも早く現実へと戻ってきたXは、静かに問いかける。

「…君は、自らを産み落としてくれた親を殺したのか?」

実にまじめな声音でかけられた問いに、少年はきょとんとした顔で首を横に振った。Xの髪を弄る両手はそのままに。

「違うぜ?俺の両親は病気で死んじゃったよ」

「………はぁ!?」



所変わって天界では、世界の様子をノートに書き留めていた書記長が頭を抱えているところだった。グリフォンの羽で作られたペンを放り出し唸る姿は嫌でも他人の目についた、丁度替えのインクを持ってきた書記長補佐がそれを目撃してしまうこととなる。

「…なにしてるの、兄さん」

さめた声音の問いかけは、書記長ことカイトを現実に引き戻すには十分な要因であった。ぱっ、と顔を上げたカイトの視界に、顔をしかめて不信感を露わにした書記長補佐、ハルトがうつり込む。

「ハルトか…実はとてつもないミスをしてしまってな」

ぐったりと身を投げ出すカイトを怪訝そうに見つめながら、ハルトは更に兄を追い込んでゆく、それはもう怒濤のような勢いで。

「で、なにをミスしたの?そこまで困ってるとこから見ると、ろくでもないミスをしたみたいだけど」

「…実は……」



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