まさしくぼーっとしながら暗黒界の門の前で黒々とした空を見上げていたWは、門が開く重々しく耳障りな音で我に返った。今日の門番はWの役目だ、面倒だとは思いつつも開いた門へと歩み寄る。何者だと問おうとして半開きになった口は、それ以上ひらくことなくその動きを止めてしまった、ついでに言えばその歩みまでも。罪人らの骨で組み上げられたら禍々しい門の前には、純粋無垢という言葉を凝縮したような清らかな少年がぽつん、と座り込んでいた。罪人と呼ぶにはあまりに似付かわしくない少年は、唖然とするWを見やって、口を開く。
「なぁ、ここどこ?」
「で、のこのこ連れ帰ってきたわけか」
Xは弟のとんでもない行動に心底辟易しながら、隣に座る少年の頭をぽふりと撫でた。少年はここに着いてからはずっとXの髪を弄っている、さらさらとした感触が楽しいのだろう。
「これって地毛なのか!?」
「…そうだが」
長い髪に顔を埋めてはしゃぐ有り様はとても重罪人とは思えない、XとWは揃ってため息をついた。そこにひょっこりと顔を出したのは末っ子のVである、見覚えのない少年の姿にVはその団栗眼を瞬かせたが、柘榴のように透き通り、宝石のように鮮やかな無邪気な瞳を見た瞬間、手前にいたWを突き飛ばす勢いでXの髪にじゃれつく少年に駆け寄った。
「えっ、誰!?」
「Wが拾ってきた子供だ、とても重罪人とは思えないなりではあるが」
「そうですか…まぁ、こんな綺麗な瞳をした子が咎人だなんてありえませんよね!!」
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