十二時半、弁当箱を開けたカイトの目に真っ先に飛び込んできたのはぴょこん、と両耳を主張するうさぎりんごの姿だった。
 基本的にカイトの昼食は弁当とコンビニ食品のサイクルで成り立っている。本日は同居人のドロワが作った弁当が昼食であり、なにを思ったかめったにそんなことをしない彼女がうさぎりんごを詰めたと、そんなところである。じっと此方を見つめてくるうさぎりんごの視線にも似たなにかを受け流しつつ、おかずに箸をのばす、が。
 そのうさぎりんごの赤い両耳が誰かさんと、具体的に言えば一人の少女と重なって、カイトの頬は瞬時に林檎の如く真っ赤になった。

(何を考えてるんだ、俺は……!)

 首を横に振って少女の像を打ち消そうとするものの、一度抱いた印象はそう簡単には消えなかった。それどころかとんでもない思考が連鎖するばかりである。このうさぎりんごを食べるということは、

 彼女を、食べるということだろうか。

 そこまで考えてしまったところでカイトは自らの目を覚ますべく近くの壁に、がんっ、とけたたましい音を立てて頭を打ち付ける。クラスの秀才の唐突な奇行にクラスメートは揃って目をむいたが、カイトは自分の思考に対する羞恥のためそれどころではなかった。
 まるで譫言のような悲鳴を上げながら、先程のとんでもない考えを打ち消すかの如く昼食を掻き込むカイトの姿はそれとなく異様だ。そんな秀才の哀れな様を、クラスメートは四十五分間見せつけられることになった。


 余談ではあるが、うさぎりんごを食した後のカイトは林檎を通り越してあたかも茹で蛸のようになっていたという。


ラ ビ ッ ト



2012.02.13


 

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