(男鹿葵)ほんとに彼女?



「じゃぁここでキスしてみろってことだよ!!」

そいつが、俺を睨みながら言った。


ことの発端は、10分前にさかのぼる。

「今日、祭やってんのか…。行ってみるか。」

魔界の試験がどーのこーので、ヒルダとベル坊は魔界に戻るらしく、それを河原で見送った帰り道屋台の匂いにつられ、祭をしていた神社に立ち寄った。

「ねぇ、おねーさん。かわいいね?一人?」

祭でナンパかよ……、暇な奴もいるもんだ。
そう思いながら、歩き出そうとした時、見知った黒髪が見えて、立ち止まる。

(邦枝…?)

「ちょ、離して!!」

「一人なんでしょ?俺と遊ぼうよ〜。」

「うるさいわね!!彼氏と来てるわよ。」

(あいつ、彼氏なんているんだ…。)

「え〜。何処にもいないじゃん」

びくり!!

(あ、嘘ついてんのか)

「ち、ちょっとジュース買いに行ってるだけよ。」

男が邦枝の手を掴む。

「嘘ついてるのバレバレだよ?」

「離して!!」

気づいたら、走ってた。
(下の名前は…葵だったかな?)

「待たせて悪かったな、葵!!」

「お、男鹿!?」

「で?お前、俺の彼女に何しちゃってんの?」

「……あ?誰、お前?」

(よそ者か…。)

俺は男の手を邦枝から外す。

「だから、こいつの彼氏だけど?」

「証拠は?プリクラとかないの?」

急に現れた俺を不審に思ったらしい。

(ちぃ、バレてるぜ)

「い、今ないわよ!!」

「ふ〜ん。じゃ、今証明してよ。」

「……」

「じゃぁここでキスしてみろってことだよ!!」

「……いいぜ。」

「ちょ、男鹿!!」

(悪いな邦枝。でも、一瞬だから我慢してくれ。)

(あ、あたしは…べ、別に嫌じゃないわ…よ)

最後の方はもう、聞き取れないぐらいに小さな声で、邦枝が言った。

「目、閉じろ葵…。」

「……ん。///」

俺は、目の前にあるピンクの唇に自分のそれをそっと、重ねた。


END


ちなみにそのあと、不良男は男鹿に殴られ「ちっ!!お、おぼえてろー!」と言いながら去って行きました。


文才欲しい……。




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