(男鹿葵)コッソリ話

大学の授業が忙しくて、いつもすぐに眠くなる。

学校に行って、帰ってきて、ごはんの支度して、課題やって、お風呂入って、予習して、少し寂しくなって、眠くなって寝る。

そんな毎日。

今どきの女子大生だったら、学校が終わったら友達と遊びに行ったり、デートしたりするんだろうけれども、家のこともあるしあたしはいつも帰宅する。

彼氏はいない。
告白だってされるし、彼氏がほしいとも思う……けど。

やっぱり、あたしは男鹿のことがまだ好きみたいで、暇な時間はあいつのことが頭から離れない。

だから、寂しくなる時間もある。

そんなことを考えていたら、携帯が鳴った。
幸い先生は、気が付いていない。

「あ、寧々だ。」

で、今日、電話があって気が付いた。

「…男鹿に電話…してみる?」

家に帰って、光太の宿題を見てあげながら自分の中で葛藤する。

「ねぇ、姉ちゃん!!ここわからない!!」

「あ、あぁ、ごめんね・・・。」

悩んでも仕方ないか…。

お風呂から出て、ベットの上に寝っころがる。
右手には携帯がある。

「…ん〜…。」

男鹿の番号を押しては、発信できず、押しては発信できずを繰り返す。

「もぉー無理!!!」

携帯を投げ出して漫画のようにベットに倒れこもうとしたとき、右手から音楽が流れ、ブルブルと震えだす。

「ひゃぁ!!」

びっくりしながら、ディスプレイを見ると『男鹿 辰巳』。

「ウソ…。」

震える指で、ボタンを押す。

『お、出た!!もしもし邦枝〜?』

「お、男鹿?ど、ど、ど、どうしたの??」

ずっと聞きたかったあいつの声にドキドキが隠せずに言葉がどもる。

『あ?ん〜暇だったから。お前が卒業してからあってないからな。東条とかはケンカするからたまにあったりするんだけどな。どうしてるかな〜と思って。』

「げ、元気よ///。お、男鹿は?大学受験とかあるんじゃないの?」

『ん〜…。どうするかなぁ?悩んでんだけどよぉ〜…。まぁお前が元気でよかったわ。姉貴も心配してたしな。』

きっと、この電話の向こうでは屈託のない笑顔で笑っているんだろうなぁと思うと胸がキューっと締め付けられる。

「…あいたいなぁ」

『ん?今から?』

「へぁ///!!!???」

『今、会いたいっていったじゃねーか。』

「ちがっ///わないけど…。」

『ん〜。俺も忙しいからなぁ…。んじゃさ!!こういうのはどうだ?』

勝手に話を進めていく男鹿に焦りを感じる。

『会えないけど、これから毎日お前が寝るまで電話しててやるよ。それでどうだ?』

「べ、別にいいけど///。」

『じゃぁ、決まりな!!おやすみ!!』

「お、おやすみ…。」

思ってもなかった好きな人からの約束に動揺が隠せない。


(ほ、ほんとに今日も電話してきてくれるのかな…?)

考えていると、授業の内容なんて頭に入ってこない。


そして、待ちに待った夜はやってきた…。
でも、いつまでたっても電話はならない。

「…やっぱりこないよね。」

と思ったとき…。

♪〜♪〜♪。

「ウソ!!」

『男鹿 辰巳』の文字。

「も、もしもし!!??」

『あ?なんだ、そんなにあわてて?わりぃ、姉貴にパシられてた。』

「ううん。なんでもない!!」

これから、毎日こうして男鹿としゃべれるのだ。

なんか、泣けてきた。

『なんで、泣いてんだよ?』

ちょっと困ったような声で尋ねてくる彼に「なんでもない」と返して、眠りについた。

それからは、毎日毎日、夜が楽しみになった。

ほんとに寝るまで電話してくれる男鹿になんだか申し訳なく感じるようにもなった。

「たまには男鹿に楽させてあげよう…。」

そう思って、寝たふりをすることにした。

「…ん。」

『眠いのか?』

「………。」

『寝た?今日は、はぇーな。毎日お疲れさん。愛してる、邦枝。おやすみ。』

プープープー…。

「////」



今日は驚かされた…。

明日は、アタシが驚かしてみようかな?




『アタシも…男鹿を愛してる。』

END 


お粗末さまです(´Д`)

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