(男鹿葵) first and last love ※死ネタ
「大丈夫か?邦枝?」
「はぁはぁ…。大丈夫。」
ここは高い塔の頂上付近。
悪魔たちとの決戦の場…。雲がすぐ近くにあり、酸素が薄い。
1階、2階と上に行くたびに悪魔がて出来て仲間が1人、また1人と悪魔を食い止めてくれている。
そして、ここは最上階。
柱爵クラスの悪魔が三匹いたが、今は1匹だけ…。
残った悪魔が、素早い動きで切り付けてくる。
「チッ!!すばしっこいヤローだぜ。」
「心月流、無刀、撫子!!」
四角に固められた部屋の一角を壊す。
これで、少しは酸素が入るはず。
「サンキュー邦枝!!」
「余計なことを…。」
「それより・・・。来るわよ。」
さすが、柱爵クラス…いや、それ以上…。
ものすごい殺気が、ビリビリと肌に伝わり気持ち悪い…。
戦っているのは、男鹿ばかりだ。
アタシなどいつでも殺せると言いたいのか…違うのか…。
バサリ…と相手の翼が音を立てる。飛ばれると厄介なのに…。
ガクン----…。
男鹿のひざが折れ曲がり膝から崩れ落ちる。
「男鹿!!!!」
「へへっ…。大丈夫…ゴブッ!!」
先ほどからのダメージか、せき込んで血を吐く。
「隙だらけだぞ、契約者-----!!!!!」
鋭く研がれ、鈍い光を放つ剣を持ち、ものすごいスピードで男鹿めがけて黒い悪魔が飛び込んで行った…。
side O(男鹿)
ザシュ!!生々しい音の後、赤い水がオレの目に飛び込んだ。
そして、それはゆっくりと床に落ちていき、ピチャピチャという音がオレの耳を犯す。
そして、最後に見たのはサラサラと流れる…オレの…大好きな黒髪だった。
「チッ!!女が契約者を庇いやがったか!!」
その言葉で気がついたのだ。
「邦…枝…?」
床に倒れている邦枝と位置を合わせるためにしゃがみこむ。
「邦枝?…オイ…邦枝?」
座り込んでアイツの頭をオレの膝に置いてやる。
「…お…が…。だいじょ…ぶ?」
弱弱しい声で、人の心配をしてくる。
「お前!!なんで、オレなんかを庇ったんだよ!!??」
「ククッ!!隙だらけだぞ契約者ァァ----!!!」
「魔王の烙印…。」
「なにっ!!!まだこんな力が!!??」
「ちょっとおとなしくしてろ。」
「お……が…。」
「なんだ?どうした?
「アタシ…死ぬ…のかな?」
「んなわけねーだろ!!」
「そっ…か。」
ニコッと力なく笑う邦枝に本当のことは言えない…。
死ぬかもしれないなんて…。
「うそ…つ…き。死ぬん…でしょ?」
邦枝の血でぬれた手がオレの頬に触れて、するすると落ちていく。
「男鹿…。好……きだっ…たよ。」
「邦枝!!オイ!オイ!!!!」
オレは・・いつからか…邦枝のことを…葵のことを…好きだったのかもしれない。
「葵------------!!!!!!!!」
叫んだあとは、自分の体が自分のものでない感じになって…。
あとは、覚えていない…。
気がついた時には、うめきながら横たわっている悪魔と、天井や壁がなくなった部屋、
服の裂けたオレ、横たわっている葵。
そうだ!!葵!!
「葵!!おい!!目ぇ開けろ!!」
生きてんのか??
「葵!!葵!!」
死んでんのか??
ギュゥゥゥ-------……。
「…葵。」
ずりぃ…。
「お前だけ気持ち伝えやがって…。」
オレだって…。オレだって…。
「勝手に死んだらぶっ殺すぞ!!!」
「バ…カ…死ん…だら…殺せ…な…いわ…よ。」
「!!!??葵!!!???」
「それに…返事…聞いて…な…い。」
「好きだ!!好きだ!!好きだ!!好きだ!!好きだ!!」
オレは、ギュッと葵を抱きしめなおす。
葵の口から血が垂れる。
「もうしゃべんな!!」
「死に…た…くな…いなぁ…。」
キュッとオレの服をつかんで涙を流す。
「死なねぇよ!!死んだら…ぶっ殺すぞ!!」
さっき、死んだら殺せないとか言われたけど、んなことは気にしない。
とにかく、コイツを死なせるようなことだけはしたくない。
葵の血が服にしみ込んで直接肌に伝わってくる。
それが、現実を知らせているようでオレは目を強くつぶった。
「死にたくない…。」
うるさい口はふさいでやる!!と己の唇を葵の口に押し当てる。
「うっ……ふぅ…。」
涙と血の味がする。
唇を離すと、葵が激しくせき込んだ。
「葵!!???」
「ハハ…。ダメ…みたい…。じゃ…ね。辰…巳…ずっと…大…好……。」
イヤダ!!イヤダ!!イヤダ!!イヤダ!!イヤダ!!イヤダ!!
「葵--------!!!!!!!!!!」
死ぬな、死ぬな、死ぬな、死ぬな、死ぬな!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
冷たくなっていく葵の手を繋いだままオレは泣いた。
生れてはじめての涙を流した。
葵を抱きしめて泣いた。
天井がない塔から、男鹿の声が響いた。
そうして彼は、いつまでも初めての涙を流し続けた。
END
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