落とし物


私が転校して来てから5日が経った。
友達もそこそこ出来たし、特に変わった事は…1つだけ、ある。
白石君が可笑しい。
いや、可笑しいは失礼だよね、うん。
私が白石君と一緒にボールを片付けた日から、白石君がとっても優しくなった。
でも、これって仲良くなったって事だから、変わった事ではない、のかな。



▽▽▽



「…あ」

「雨宮ちゃん、どないしたん?」

今は体育の帰り、次はお昼休みだから、廊下にはあまり人が居なかった。
友達と他愛も無い話をしていて、私はふと、廊下に何か落ちている事に気付いた。


「これ…」

「生徒手帳やな」

廊下に落ちていたのは生徒手帳だった。
きちんと記名もされていて、見れば財前 光と書かれている。
学年とクラスも書いてあるし、届けた方がいいよね。


「先に戻ってて、これ渡してくる」

「おん」



▽▽▽



「ここ、かな」

2年7組の教室の前に立ち尽くす私。
いきなり財前君を呼び出すのも悪いし…と思い、拾った生徒手帳を見ていた。


「…あ」

知り合いがいるじゃないか!
2年7組は真樹ちゃんのクラスだったはず。
教室の中で真樹ちゃんの姿を探す。
すると窓際付近の席に座っている真樹ちゃんを見つけた。
隣の席の男の子と食べてるのかな…?
良かった、真樹ちゃん1人で食べてるのかと思ってたから。


「真樹ちゃん」

「っ、瀬奈先輩!」

真樹ちゃんは私の顔を見るなり、目をキラキラさせて私に駆け寄ってくれた。
あれ、そんなに真樹ちゃんを大声で呼んだつもりは無いんだけどな、すごく注目されてるような気がする。
間違いない、その証拠に先ほどまで騒がしかった教室がしん…と静まり返っている。


「瀬奈先輩、どうしたんですか?」

「あ、このクラスに、財前君っているよね?呼んで欲しいんだけ、ど…」

「…財前、ですか」

今、真樹ちゃんが笑ってないような気がした。
口元ら笑ってるけど、目は決して笑っていなかったように感じた。


「呼んで来ますね!」

「あ、ありがとう…」

「いえ!先輩の頼みですから!」

にこっと笑う真樹ちゃん。
さっきのは気のせいだったのかな。
真樹ちゃんはさっきまで一緒にお昼を食べていた男の子に話しかけた。
あの子が財前君だったのか。


「…何すか」

黒髪の短髪、両耳にはキラリと光るピアスを付けている財前君が眉を寄せ、私を見定めるかのように見ている。


「貴方が財前君?これ、廊下に落ちてたから…」

生徒手帳を差し出せば、財前君は目を見開き、生徒手帳が入っていたと思われるズボンの後ろポケットを確認する。


「…どうも、おおきに」

「いえいえ」

「…もしかして、アンタ転校生っすか?」

「え、うん、そうだけど」

「…ふぅん」

財前君は口の端を釣り上げてから、私にもう一度お礼を言い、戻って行った。
財前君も美人さんだったなぁ。


*2012/11/17
(修正)2015/12/29

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